ファイト・クラブ / Fight Club

ファイト・クラブ / Fight Club

『ファイト・クラブ』とは、1999年に公開されたデヴィッド・フィンチャー監督の映画で、チャック・パラニュークの同名小説を原作としている。現代社会の消費主義やアイデンティティの喪失をテーマにした、サイコロジカル・スリラーである。名前の明かされない主人公が不眠に悩まされるところから物語は始まっている。主人公は医者の勧めにより、様々な自助グループに参加し、そこでマーラ・シンガーというひとりの女性に出会う。またある時に主人公は、飛行機の中でカリスマ的な石鹸の販売員タイラー・ダーデンと出会い、彼の影響でFIGHT CLUBを結成する。『ファイト・クラブ』は男性たちが地下で、殴り合いをする秘密の集まりで、次第に過激な行動をエスカレートさせていく。物語が進むにつれて、主人公はタイラー・ダーデンの正体と自分自身の真実に気付き、衝撃的な結末を迎える。タイラー・ダーデンのキャラクターは、主人公の分身であり、主人公の抑圧された欲望や反抗心を具現化した存在である。

usakon4のレビュー・評価・感想

ファイト・クラブ / Fight Club
10

絶対に二回見たくなる映画『ファイト・クラブ』

タイトルは知っており、人からも度々勧められてはいたのですが、どんな内容なのかを聞くと皆曖昧な感想しか言ってくれない、そんな不思議な映画だと思っていました。
実際に観てその理由がわかりました。
「これはものすごく面白いけど、ネタバレをしないように勧めようと思うと何も話せなくなる映画だ!」と。

アパートが爆発することで生活が一変した不眠症のサラリーマンのノートンと、破天荒だが視聴者や出会ったばかりのノートンを惹きつける魅力のある、ブラット・ピット演じるタイラーが始める共同生活。
「僕」であるノートンの視点で進んでいくこの映画は、前半パートは鬱屈した日常を吹き飛ばしていく爽快感を感じながら進んでいきます。
そしてこの二人を発端に集まりだした男たちによりタイラーが結成した「ファイト・クラブ」という、閉店後のバーの地下でただただ素手で殴り合う組織の結成。多くの視聴者は、そこに生き甲斐を見出していくノートンに感情移入していくでしょう。
そしてタイラーの主導で「ファイト・クラブ」のメンバー達により行われる様々ないたずらが、徐々にテロまがいな内容になっていき作品は不穏な空気に満ちていきます。
ノートンの視点で物語を追っていく視聴者も「タイラーは一体どうしたんだ。そもそもタイラーは何なんだ」という疑問や不安をノートンと共有していきます。
しかしそんな感情移入すらもまた、爆発したノートンの部屋のように派手に吹き飛ばされました。
この映画の肝である「タイラーはノートンが作り出したもう一つの人格である」という衝撃的な展開。
アパートを爆破したのも、ファイト・クラブを結成したのもテロを主導したのもすべて「僕」でありタイラーでもあったノートンでした。
終盤に明かされるこの仕掛けは、映画の始まりから様々な伏線が巧妙に盛り込まれているのです。
「何度も見返すほどとんでもなく面白いから人に勧めたいけど、見てない人には多くを語れない。だけど絶対に観てほしい!!」
独特な画面構成や斬新かつ丁寧な空気づくりも含めて、そんな思いにさせてくれる素晴らしい映画でした。