30年先も色褪せないクリストファー・ノーラン監督の傑作
クリストファー・ノーラン監督は、出世作「メメント」で人気を呼び、その後、バットマンシリーズ3部作の「ダークナイト」で、映画監督としての圧倒的な知名度を獲得した人物。その後ディカプリオ主演の「インセプション」でも大ヒットを記録した後、満を辞して発表したのが「インターステラー(2014年)」だ。飢饉による滅亡の危機に瀕した人類を救うため、人類が住める第二の惑星を求めて宇宙を駆け巡る親(演:マシュー・マコノヒー)と娘(演:ジェシカ・チャスティン)の絆の物語だ。
光速移動による時間の伸び(相対性理論)により、宇宙ではほんの数時間の出来事だったのが、地球では数十年の年月が経ってしまうというアクシデントに見舞われながら、人類存続のため、娘のために必ず帰ると約束した父親の強い意志が作品を通して観る人を感情を揺さぶる。重力や相対性理論など、科学的な言葉が頻出するため、一般の人には理解が難しい話もある。だが、単に科学のロマンに終始するのではなく、前編を通して監督は親子の絆を描くことに重きを置いているため、エンターテイメントとして完成度が高い。
また、IMAXカメラを用いた撮影にこだわりを持っているノーラン監督は、本作でもIMAXカメラの大迫力画面の魅力を見事に発揮し、映像としてのクォリティの高さを極限まで追求している。3DCG技術が発達している現代においても、極力CGを用いない実物へのこだわりが感じられる。CG技術が進化を遂げることにより、過去のCG作品がどうしても稚拙なイメージを持たれてしまう映画も少なくないなか、実物の被写体を画面に収めることに尽力するノーランの映画は、技術的に30年先でも色褪せない映像に仕上がっている。壮大な物語と圧倒的な映像品質、この2つの観点から見て、「インターステラー」は何十年も語り継がれるべきSFの超大作と言えるだろう。