子供向けじゃない恐ろしさを美しく見繕って発信している
三日月の形をした空に浮かぶユートピアを偶然見つけたのび太は、いつもの五人でタイムトラベル機能が付いた飛行船に乗ってユートピアを探して冒険に出発する。やがて、パラトピアと呼ばれる理想郷へと上陸してネコ型ロボットのソーニャや住民たちと仲良くなる。パラトピアの学校では苦手なことがあっても馬鹿にしたりせず、生徒同士が応援して励ましあう優しい世界……かと思いきや、それらはすべて偽物だった。敵役の科学者(ばいきんまんの声の人)が作った洗脳光線を発信するマシンの実験台として、拉致、誘拐された人々が集っている、嘘で塗り固められた王国だった。残酷な仕様のひみつ道具や同じ作者の少し不思議短編集で生々しいテーマの漫画を読んだりして、不二子作品は子供向けの絵柄で大人向けの表現をするとは知ってはいたが、まさか、小さい子供も見るアニメ映画版で、気が付かないうちに世界征服を企む者の罠にはまって洗脳されるという大人でもぞっとする内容にするとは予想外だった。主要キャラたちが小型の飛行機に乗って青い空を駆けるポスターと、NiziUが歌う可憐でファンタジックな歌詞の主題歌でも、とてもこの映画の恐ろしさはマイルドにならない。むしろ、夢のあるビジュアルとイメージを与える形にして発信しているから余計に恐怖が際立っている。