説明になる描写が欲しかった
ジェネレーションズが(以下ジェネと略す)主演の、30年以上前にラジオ番組あてに送られたカセットテープから始まったジェネメンバーと仕事の関係者たちの連続失踪事件と呪いの歌がテーマの怪異の物語だ。結論を言うと、推しメンを大スクリーンで見たいジェネファンのための映画だった。恐怖演出がぬるかったので、日頃から「エルム街の悪夢」や「遊星からの物体X」などの容赦のない描写があるホラー映画を鑑賞する人には、物足りなく感じるだろう。同時期に上映中の違う作品を見るか、レンタルかサブスク配信で別の映画を見るほうをお勧めする。
個人的にお勧めできない一番の理由が、今回出演者を蝕む幽霊のさなの心情の変化が不明確なのが、一番嫌だった。
映画終盤にさなの自宅である高谷邸に乗り込んだ際に、くすんだ鏡の中で、30年前にさなが掃除機のコードを使って両親に自らの首つり自殺を手伝わせる様子が鏡の中で流れ、ジェネのマネージャーの凛がなぜか鏡の中の過去の世界に引き込まれた。やがてコードが限界まで引っ張られて扉のかすがいが外れて壊れると、凛がさなが怪我をしないようにかばって扉と一緒に階段を滑り落ちていった。気を失った凛にさなは微笑みかけて、やがて命を失った。凛は現代の高谷邸に戻り、失踪した人々も戻ってきた。
確かに高谷邸に乗り込む前に凛は「さなに寄り添ってあげられれば失踪事件は解決するのでは」と言っていた。しかし、あのいっしょに階段を滑り落ちる場面の中で、さなにどんな心情の変化があったのか、凛のほうを見て微笑んだだけではわからなかったので、もっと説明となる描写が欲しかった。しかも、映画の最後のジェネのライブで来場客たちがみんなさなの呪いの歌を口ずさみだしてエンディングクレジットに入って終了した。解決してハッピーエンドかと思いきや、被害が大規模になったバッドエンドだった。結局さなは何がしたかったのか、この映画は考察系だという可能性もあるけれど、もうアイドルメインのホラー映画のクオリティは信用できないなと、個人的に断定できた。