人間の優しさと悲しさが詰まった大叙事詩!人類全員進撃の巨人を見ろ!
『進撃の巨人』を知らない人がまだこの世の中にいることが信じられない…。そのくらい、人間にとっての共通神話となってもいいであろうこの物語。
巨人と人間の戦いとして幕を開けたこの物語は、いつの間にか人間同士の悲しく、残酷な戦いの物語となっていた。
人が人として生まれたはずなのに、いつの間にかこの世には格差と差別があり、そして支配するものと支配されるものがいた。
人類史の中で変わらない共通の暴力と悲しみの連鎖を、諫山先生は丁寧に、そして凄まじいドラマを持って描いたのだ。
未だに読み終わった人々の間でも考察が続けられていることから、難解な物語というイメージを持つ人も多いだろう。
しかし、その難解さがわからなくてもきちんと物語の大筋は掴めるし、登場人物全員の背景やキャラクターも理解できる。
その分彼らの死が本当に辛くなってしまうという弊害はあるが、ここまで一人一人のキャラを粒立てて描くことができるのはやはり諫山先生の才能なのだろう。
戦争は悪人によって引き起こされるのではないという、誰もが忘れてしまう事実を、この『進撃の巨人』という物語は力強く描き出している。
人類史における暴力を、巨人というテーマで描くことでここまで読者を惹きつけ、考えさせられる物語が未だかつてあっただろうか。
『進撃の巨人』を知らない人が羨ましい。
最初からあの重厚な物語が読めるのだから。