かがみの孤城

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かがみの孤城
8

生き辛さを感じる人へ

累計発行部数100万部を超える辻村深月先生の同名小説をアニメ映画にした本作。生きることに対する辛さを感じている人にはぜひ見てほしい一作です。
まずは簡単にあらすじを紹介します。
いじめにより不登校となっていた主人公のこころを始め、様々な理由で学校に行けていない7人の子どもたちが、鏡を通して突如謎の城に迷い込むところから始まります。狼様と名乗る謎の少女は「この城の中にある秘密の鍵を探し出せればどんな願いも叶う」と話しました。ただし、鍵を見つけたら城での記憶はすべてなくなるというストーリーです。

今作を見て感じたことは、「希望を捨ててはいけない」ということです。
こころたちは現実に苦悩しながらも、互いの交流の中で居場所を見つけていきます。けれど城に居られる時間には限りがあり、城から戻ったらまた辛い現実に向き合わなくてはいけません。そんな中でも必死に生きようとする子どもたちの苦悩がすごくリアルで、決して他人事ではないと感じました。
作中ではいじめに対して、「ああいう人(いじめっ子)はどこにでもいる。くだらない人を相手にしてはいけない」と評しています。また一方で、コミュニケーションが苦手でいじめられていたウレシノという男の子を、主人公のこころも含めた子どもたちは悪意なく邪険に扱います。それに対しこころは、「私も知らないうちにウレシノくんだからいいやって思っていた」と思い直します。いじめは特別なものではなく、自分がその加害者になることさえあるものだと描いています。
つまり、問題の根本的な解決はできないかもしれないと描いているのです。それでも支えてくれる人がいる、フリースクール等の他の生き方もある、自分が絶望さえしなければ、必ず未来はある。そんなメッセージを感じ、子供だけでなくあらゆる人に見てほしいと感じました。

少しだけ残念なことを挙げるなら、尺不足と伏線の単純さです。希望に向かっていく展開は見事なのですが、人間関係の深掘りを映画の尺で描くことが難しかったのか、最後はかなり駆け足気味だと感じます。
また、7人の子どもたちに共通する秘密や狼様の正体等、随所に伏線は散りばめられているのですが、先の展開がかなり容易に予想できてしまうものが殆どですので、謎解きをメインにしたい方には少し合わないかもしれないと感じました。

以上のような気になる点はあれど、見ていて心が暖かくなること間違いなしの映画です。生き辛さを感じている方には是非とも見ていただきたい作品です。