壮大な伏線祭り
進撃の巨人といえば、名前すら聞いたことないという人は少ないだろう。超がつくほど有名な作品で、2023年1月末に漫画界のカンヌと呼ばれる「アングレーム国際漫画祭」において、特別賞を受賞した。そんな偉大な賞を手にした進撃の巨人はなぜあれほど人気であり、引き込まれるのだろうか。私は読み手を興奮させる技術である「伏線回収」に理由があると考える。
まず、タイトルすらも伏線だ。「進撃の巨人」と聞けば、「ああ、人間vs巨人の話かな」と思うだろう。しかし、「進撃の巨人」とは主人公のエレン・イェーガーが継承した巨人の名称である。では、普通の巨人はなんなのかというと、他の国に捕虜にされた同じ民族であり、巨人化する薬を打たれて「無垢の巨人」としてエレンらの領地を襲っていたのだ。つまり調査兵団は、自国の領地を広げるために同じ民族を殺していたということだ。巨人がどこからきたのか、正体は一体何なのか、といった伏線は第1話からずっと張られていたのである。
また超大型巨人が第1話で突如姿を消した理由も、元々人間だからである。無垢の巨人とは違い、特殊な巨人は意識的に人間に戻ることができた。消えたと思ったら、実は調査兵団の中にスパイとして紛れていたという、予想もしなかった展開だ。
これ以外にも伏線はさまざまな箇所に散りばめられている。まだ読んだことない人はもちろんのこと、1度読破した人ももう一度読み返してはいかがだろうか。2度目だから気付くことも山ほどあるだろう。