八軒勇吾の成長ぶりがすごい
夢も希望も持たない主人公・八軒勇吾が流されるままに農業高校に進学し、そこで様々な人との関わりや経験を積んでいき、最終的には学生起業家となる一人の少年の成長を描いた作品です。
八軒は農業高校での馬術部への入部、手作りピザへの挑戦、授業で飼育していた豚を使用した加工食品作り、また、今まで行ったことのないバイトなどを経験していきます。
その経験を通して、これまで他人との関わりを積極的に持ったり、自分から興味を持って何かに取り組んだりしたことのない八軒の成長ぶりがまた凄いのです。
手作りピザの話では、成功に至るまでの八軒の努力は凄まじいものです。最初は面倒なことだと感じながらも、石窯作りからピザの作成までの過程を一から自分で調べつくし、同級生や先輩の力を借りながら成功させ、充実感を得ることができています。そのような結果を得て八軒は以降様々な経験を積みながら学生起業家になるという夢を持ち、最終的にそれを実現させます。
その中での八軒の葛藤や心の変化について、また経験の過程やそれが実際にどのような手段を取るのか、計画がどのように進行するのかが非常に詳細に描かれており、それを通じて一人の少年がここまで成長できるのかという点が分かりやすく読み進められます。
また、もう一つの読みどころは、ヒロインである御影アキとの関係性です。最初はお互いにただの同級生という関係ですが、アキと親しんでいくうちに恋愛感情が生まれ、恋人にまで発展します。ここまでの過程もなかなかスムーズにはいかないのですが、そこが次はどんな展開になるのかが気になり、じっくり二人の関係性を見ていく楽しみがあります。
絵柄については、人物はすごくシンプルに、背景などは細かく描かれています。それでいて「ごちゃごちゃしていて読みづらい」という印象がないので、読んでいて疲れることはありません。
絵柄も内容も十分満足できる作品ですが、最初の方の本編の細かさに比べ、八軒の学年が上がるにつれて話の展開が早すぎるところが少し残念でしたので、評価は7というところです。