息子の復讐などしていない。
作品のテーマは「いじめ」で、不条理や正義の物語のはずだが、 いじめ被害者であるはずの江原敏郎、楠本充の内面や心情が描かれていない。いじめを題材にする以上、彼等の人間性を出すことは必然だと思う。
また、父親の行った行動は復讐というよりも八つ当たりに近い部分が多すぎて、一切同情できない。そもそもの話、江原敏郎が中学生の時のいじめを相談した時に息子に向き合うことをしていれば、江原敏郎は御子柴弘がいる高校に進学しなかった可能性もある。
何よりも父親の江原明弘の凶器の隠し場所からして息子のためではなく自己満足である要素が強い。もし本気で息子の無念を晴らす復讐なら息子が眠る仏壇を凶器の隠し場所にするようなことはしない。何故なら、息子を自殺に追い込ませた御子柴弘の血の着いた薄汚い物を息子にお供えしたようなものだからだ。そんな穢れた物をお供えする姿は人としても親としても失格だ。
その上、自分が最初に息子の助けてほしいというお願いを拒否したくせに裁判で自分の思い通りにいかないという理由で法律にまで八つ当たり染みたことをしている。
そもそも江原明弘は最初に息子を助けなかった時点で本編での全ての行動、発言は意味をなしていない。
極論でいうと、江原敏郎にとって父親の江原明弘という存在は、自分をいじめた連中と同類でしかない。