”ゴジラ”の存在以外すべてがリアル
子供のころから”ゴジラ”が大好きな庵野秀明監督&樋口真嗣監督がタッグを組んで、作りたい”ゴジラ”を作ったらこうなった…という超大作です。
「現実(ニッポン) 対 虚構(ゴジラ)」というキャッチコピーがそのまま全てを体現しています。
突然日本に上陸した巨大生物の存在と、それによる甚大な被害に右往左往している日本の役人・政治家、そして自衛隊の対比が鮮明で興味深く、そしてこの作中の自衛隊には現実の装備しかない、という潔い設定で、その中からどうやって活路を見出していくか、が物語の軸になっています。
その状況を引っ張る主人公の矢口蘭堂(長谷川博己)は衆議院議員から時系列的に肩書がどんどん変わり、最終的に"巨大不明生物防災担当の内閣府特命担当大臣"という役職に就きます。怪獣=巨大不明生物と戦うには役所の仕組みをクリアしていかなければ命令を下すこともできないという滑稽さが逆に笑えない、そんなシーンがさしはさまれて行き、だからこそ矢口の剛腕ぶりとその背中に背負った責任の重さが伝わってくるのです。
リアルな東京の街が無残な状態になっていくなかで、懸命にその被害を食い止め、ゴジラの息の根を止めようと奮闘するシーンはきっと庵野監督&樋口監督らがやってみたかったことをこれでもか、と盛り込んできたのだろうなという意外性のある戦術が畳みかけるように描かれており、日常でよく目にするものが意外な使われ方をしているのも笑いのツボになっています。
東京の街を知っている人も、そうでない人も、大人も子供もきっと楽しめる、『シン・ゴジラ』はそんな超娯楽特撮映画です。