あまりにリアルで生々しい
この作品は鮮やかな伏線回収やシリアスとギャグのバランスも評価されていますが、なんといっても生々しいまでの人間味が魅力です。
まだあどけない少年たちは「命とは、人間とは」というような重い課題を目の前に容赦なく突きつけられ、成長せざるを得ない状況でしぶとくひたむきに成長していきます。
その伝え方が丁寧で思わずのめり込んでしまいました。
「大切なものを守る」
「心の強さ」
「優しさ」
という頻出ワードをもう一歩踏み込んで、「それってつまりどういうこと?」まで深掘りしていくような作品で、読者も知らぬ間に一緒に掘ってしまっています。
主人公の兄弟を取り巻く錬金術師達も一本筋の通った気持ちいい大人が多く、実力はありながらも人間として未熟な兄弟を諭し、導きます。
反抗して素直に落ち込んで受け入れていく兄弟達は良くも悪くも少年らしくて愛らしくもあります。
こう書くとかなり深くて重い作品なのかと思うかもしれませんが、構成がうまいので重苦しくならずに読めます。大丈夫です。
初めて読んだ時は主人公達を応援する立場でしたが、大人になってから読むと周りの大人達の行動の意味を理解することができて共感が止まりません。
是非何度も読み返して頂きたいです。