泉谷しげる

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泉谷しげる
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泉谷しげるの、アイヲシレ

「雨ニモマケズ 風ニモマケズ サウイフモノニ ワタシハナリタイ」
御存じ、宮沢賢治の詩(実際は日記の中の一節)である。
私は、泉谷しげるの、至極の名曲「春夏秋冬」を聴く度に、何故かこの詩を思い出す。
宮沢賢治の、「雨ニモマケズ」には「春夏秋冬」のフレーズの、「人のために良かれと思い、西から東へ駆けずり回る」と、同じようなニュアンスの一節が有る。
そして、最後は「サウイフモノニ ワタシハナリタイ」で終わる。
つまり、それは宮沢賢治の理想の人物像だと言える。
一方、泉谷しげるの、「春夏秋冬」では、よりリアルな表現が多く、現実を伝えている。
そこには、時代を問わずに消える事がない、世の不条理が見える。
その不条理に、物心ついた時から振り回され、浮かばれる事が少なくとも、
また仕切り直して今日から生きて行こうと誓う脆い決意を感じさせ、
敗戦国日本の夕暮れの情景の中にいるような、ノスタルジックな気分を彷彿させる。

さて、泉谷しげるは、青森県青森市長島にて、昭和23年(1948年)5月11日に誕生する。
しかし、幼年期にポリオウイルスに感染し、その後遺症で片足が麻痺してしまった。
足を引きずるようになるので、当然イジメにあう。
その時期くらいから、口で負けないように言葉遣いが乱暴に成ったと言う。
そんな泉谷しげるだが、昨今はミュージシャンとしてよりも、バラエティ番組とか役者とかで活躍しているので、
若い人たちは、大半の方がタレントと勘違いしているかと思う。
しかし、彼は紛れもなく、唯一無二の偉大なミュージシャンなのだ。
彼の楽曲は、一件武骨に聞こえるし、その風貌から、傍若無人な人間性にも見えるが、じっくりと彼の楽曲を聞き返して欲しい。
泉谷しげるの、人間性を現したとされる、2013年「第64回紅白歌合戦」のエピソードだが、65歳で初出場し「春夏秋冬2014」を熱唱する。
いつものステージでやっているパフォーマンスだが、サビの部分での手拍子にブチ切れて「手拍子辞めろ!」と一括。
その後のコメントで、「今夜紅白の会場に、居るような、恵まれた奴らには歌いたくない」、
「テレビの向こうで寂しく過ごしている奴や、帰りたくても帰れない奴に歌った」と心境を述べる。
賛否両論あったが、私は弱者の痛みが判る人間のコメントではないかと思う。
事実、そのような環境に居た視聴者から感謝のコメントが殺到したと言う。
もうひとつ、彼のミュージシャンとしての生き様を垣間見る動画が有る。
坂崎幸之助と泉谷しげるで、「ヨイトマケの歌」を歌うシーンだ。
その動画では、坂崎幸之助がアコギで演奏し、泉谷しげるがギターも持たず「絶叫」した。
しかし、間奏の際に泉谷しげるはやるせない表情をして、涙をこらえる。
自身が、脚が不自由だと言う理由で、イジメられた過去とダブったのかとも思えたが、
何時の時代に成っても変わらない、この世の不条理に対する悔し涙だったと読み取った。
ヨイトマケの歌は、美輪明宏作詞作曲で1966年にヒットし、多くのミュージシャンがカバーしているが、
私は泉谷しげるのバージョンが一番だと思う。
泉谷しげるの楽曲には女性をイメージしたラブソングなど存在しない。
彼は偏った相手への愛など、叫ばない!
泉谷しげるは、社会の弱者に愛を叫ぶのである。
それ故に、「どんな綺麗な唄よりも、どんな綺麗な声よりも、泉谷しげるの、唄こそ世界一」なのである。