ミッドナイトスワン

5ikai-hazamaのレビュー・評価・感想

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ミッドナイトスワン
10

愛と性と命

この映画を観て一番最初に感じた感想は、自分らしく生きるということはとても難しく、そしてとても美しいということ。
凪沙もいちかもりんも、様々なしがらみによって自分を出せていなかった。
そんな似たようで全く違う環境の人達が繋がり、それぞれの自分を出していくまでの過程を描いた映画。
そんな映画だと私は思った。

一番衝撃的だったのはやはり、りんの自殺シーン。
舞台が屋上だった時点で薄々勘付いてはいたが、それでも息を飲んでしまうほどの迫力。
いちかとりん、お互いが全く違う場所で同じ曲を踊っていく様は何とも幻想的で美しいものだった。
りんも笑顔で自由に踊っていて、飛び降りる時も死への恐怖なんか感じさせないぐらい軽やかで。
りんは最後の最後で誰からも縛られない自分だけの踊りが出来たんだなと感じさせるシーンだった。
それと同時に、親に無理やりやらされていただけだったかもしれないバレエは、りんにとって大好きなもので、
かけがいのないもので、いちかと繋いでくれたとても大切なものなんだとわかるシーンでもあった。

次に印象的だたのは凪沙といちかの海辺でのシーン。
砂浜で踊るいちかを見る凪沙の目は、間違いなく母親そのものだった。
性転換をしても本当の母親にはなれない。それでも凪沙はいちかの第二の母親であるんだということがひしひしと伝わってきた。
いちかの本当のお母さんも、映画の最初の方はいかにもダメな母親、というようなイメージがつく性格だったのに、
最後の方にはちゃんと母親の顔になっていて、いちかも暗い顔から明るい顔になっていた。
理想的、とまではいかなくともそこにはちゃんと親子の絆があった。

本当の愛とはなにか、性別という大きな壁は超えることができないのか、
命というのは誰のためにあって誰が大切にするべきなのか、等を考えさせられるとても面白い映画だった。