ミュージカル映画の名作。子供たちが全身で音楽の楽しさを表現する『ドレミの歌』は胸が熱くなる。
ナチスドイツが台頭した頃のオーストリアのある一家と修道女を描いたミュージカル映画だ。
退役海軍であるトラップ大佐の子供たちの元に家庭教師としてやってきた修道女マリア。
厳格な父親からまるで軍隊のような規律だらけの教育を受けていた7人の子供たちは、彼女の音楽を用いた教育法により瞬く間に心を開いていく。
マリアと子供たちが野山や町中を駆けながら歌うのは、誰もが一度は耳にしたことがある『ドレミの歌』だ。
ハーモニーや映像の美しさに目を奪われるのはもちろん、本来の活発さを抑圧されていた子供達が大自然の中で歌う姿に胸が熱くなる。
映画の中で歌われる名曲たちはどれも和訳が美しい。
特に『私のお気に入り』はマリアの好きな日常の1コマを軽やかに歌ったものだが、「まつげにつもる雪」「月の谷間飛ぶ鳥」など美しい表現にハッとさせられる。
終盤、ついにザルツブルクにナチスの侵攻が迫り、トラップ大佐の元に軍への出頭命令が下る。
物語は一家が追跡を躱しながらスイスへの亡命していくところで終わりを告げる。
深刻な社会情勢の中で堂々と一家が歌い上げた『エーデルワイス』は作中屈指の名曲だが、
自由に自分の思想を述べられる現代でもこうも純粋に愛国心を表現できるのか、
アイデンティティを周囲の状況に流されずに抱き続けることができるのか、と思わず考えてしまうだろう。
何度でも観たい名作だ。