「進撃の巨人」はシリアスな題材なのに疲れない
人類は“巨人”によって支配され、巨大な壁の中での生活を余儀なくされていた。
100年壊されることのなかった壁に人類は安心して生活していたが、突如現れた“超大型巨人”によって壁は破られ、再び人類の生活は脅かされてしまう。
その5年後、主人公のエレンたちは“調査兵団”へ入団し、巨人を討伐し謎を解明すべく壁の外へ出向く。
「進撃の巨人」は、一言で言うと戦争の話である。
戦争が描かれている作品の視点には様々なものがあるが、この作品は“愛情”が重きを置いているひとつと言える。
キャラクターの家族、恋人とのエピソードや思い出などが、少しずつだが丁寧に描かれている。
また戦争に立ち向かっていく恐怖や、生きるか死ぬかの状況での行動や表情など、人の心情がリアルに描かれていて、感情移入しやすい。
度々登場人物の発言や表情で、読者が騙される箇所があり、真相が分かったあともう一度読み返すと納得できるところが非常に面白い。
そして伏線が多くちりばめられており、単行本のすみからすみまで見逃せないため、2度以上読むのがおすすめだ。
何度も読むのは大変な気もするが、この作品は絵でしっかり表現されている箇所と、大きな吹き出しが多い。
またユーモアのあるコマや擬音、どこかでみたことがある巨人の出現など、シリアスな中でくすっと笑える遊びがバランスよく隠されている。
そのため、読みごたえがあるにも関わらず、さくさくと疲れずに読むことができる。
物語の土台として、作者は北欧神話を取り入れているそうだ。
世界史的な要素もあり、色々な観点から楽しめるだろう。
作中の文字や壁の実際の広さ、作中の世界地図や日の登りかたさえも注目してみてほしい。