北の寒さを吹き飛ばす男たちの熱い戦い
北海道のどこかに隠されたアイヌの金塊をめぐる冒険譚。
様々な角度から趣向を凝らしており、多層的な魅力で読者を飽きさせない。
何度でも読みたくなる本作の魅力の一端をご紹介したい。
1.キャラクター
不死身の二つ名を持つ主人公・杉元、アイヌの少女・アシリパ、人たらし・鶴見中尉率いる第七師団の面々、
金塊のありかを示す刺青を体に掘られた囚人たち…。
多数のキャラクターが登場するが、それぞれの思惑や金塊を求める動機が深く描かれている。
敵味方が入り乱れる描写の中で、それぞれの関係性が変化していく様子も細やかに描かれている。
2.歴史ロマン
舞台は日露戦争後の明治時代。戦争により心や体に傷を負った登場人物も少なくない。
また、鬼の副長と呼ばれた新選組の土方歳三も主役級の重要な役どころで登場しており、好きな人にはたまらない。
3.アイヌ文化
現代の日本人には決して身近とは言えないアイヌ文化を魅力的に紹介しており、異文化理解に一役買っている。
4.狩猟とグルメ
北国の山や海で獲れる動植物を料理しておいしくいただくシーンが豊富にある。読めば思わず「ヒンナヒンナ」と言いたくなるだろう。
5.ギャグとシリアスのバランス
キャラクターの関係性や個性を生かしたギャグシーンも楽しい。
シリアスな本編の合間に挟まれるギャグでクスリと笑い、肩の力が抜ける、そのバランスが絶妙である。
6.美術や映画への多数のオマージュ
ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」を模したシーンではで各キャラクターが座る位置に趣向が凝らされていたり、
鶴見中尉の演説シーンはヒトラーのそれと同じポーズになっていたり。
作中に散りばめられた絵画や映画へのオマージュを探すのもまた一興。
本作にはアニメ版もあるが、漫画を先に読んでいると2倍3倍に楽しみが膨らむだろう。ぜひ、手に取っていただきたい。