ミステリと言う勿れ / Do not say mystery

『ミステリと言う勿れ』とは、2017年1月号から『月刊フラワーズ』(小学館)で連載された、田村由美によるミステリー漫画である。第1話は読み切りとして、78ページの長編で掲載された。コミックスは11巻が刊行され、2022年の時点で累計発行部数が1,600万部を突破した。電子版は2021年7月の1ヵ月で、小学館の歴代最高売り上げを記録した。
物語は主人公の久能整(くのうととのう)が、ひたすら話して事件を解決する姿を描いている。
タイトルの『ミステリと言う勿れ』は、作者の「ミステリのような難しいものは描けない」という主張が反映されている。
2018年に『ダ・ヴィンチ』の8月号で「今月のプラチナ本」と紹介され、編集長に「読者の目に映る世界をひっくり返すミステリ作品」と称された。2019年には「このマンガがすごい!2019」のオンナ編第2位、「マンガ大賞2019」第2位を獲得し、2022年には「第67回小学館漫画賞」の一般向け部門を受賞した。テレビドラマは2022年1月から3月まで放送され、久能整役を菅田将暉が演じた。

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ミステリと言う勿れ / Do not say mystery
9

この一言がなければ

「楽しかったですか」
Episode1のこの一言に今後も継続して購読することを確定させられた。
他のミステリーものと一線を画する決定的な一打だった。
この一言を発する前に犯人は分かっている。ミステリーの醍醐味である犯人探しは終わっているのだ。
動機も納得かつ人情に訴えるものである。他の作品であれば、十分エンディングを迎えていい場面だ。
しかし、このお話のクライマックスはここからだ。動機の奥の奥、見えなかった心の底、暗く濁った澱みが明らかにされていく。
そこまで言ってしまうの?と思う。まさに死者に鞭打つ言葉が並ぶ。あまりにも的を射すぎていて、誰も何も言えなくなってしまう。
その雰囲気に魅了され、第一話から否応なく引き込まれていった。
タイトルの通り、この作品はミステリーではない。ことごとく人間のエグさをついてくる、人間観察作品だ。
主人公の整(ととのう)君はとても魅力的だけれど、絶対身近にいてほしくはない。彼の人を見る目は鋭く、描写も的確だ。
だから怖い。自分が見透かされてしまう気がする。あまりに考えなしの自分の底の浅さに気付かされてしまう。
でも、彼に会いたい。もっともっと彼の話していることを聞きたい。
そんな想いに囚われてこの作品を読み続けてしまうのは、きっと私だけではないと思う。