この一言がなければ
「楽しかったですか」
Episode1のこの一言に今後も継続して購読することを確定させられた。
他のミステリーものと一線を画する決定的な一打だった。
この一言を発する前に犯人は分かっている。ミステリーの醍醐味である犯人探しは終わっているのだ。
動機も納得かつ人情に訴えるものである。他の作品であれば、十分エンディングを迎えていい場面だ。
しかし、このお話のクライマックスはここからだ。動機の奥の奥、見えなかった心の底、暗く濁った澱みが明らかにされていく。
そこまで言ってしまうの?と思う。まさに死者に鞭打つ言葉が並ぶ。あまりにも的を射すぎていて、誰も何も言えなくなってしまう。
その雰囲気に魅了され、第一話から否応なく引き込まれていった。
タイトルの通り、この作品はミステリーではない。ことごとく人間のエグさをついてくる、人間観察作品だ。
主人公の整(ととのう)君はとても魅力的だけれど、絶対身近にいてほしくはない。彼の人を見る目は鋭く、描写も的確だ。
だから怖い。自分が見透かされてしまう気がする。あまりに考えなしの自分の底の浅さに気付かされてしまう。
でも、彼に会いたい。もっともっと彼の話していることを聞きたい。
そんな想いに囚われてこの作品を読み続けてしまうのは、きっと私だけではないと思う。