ノマドランド

ノマドランド

『ノマドランド』(原題:Nomadland)とは、ジェシカ・ブルーダーによる2017年のノンフィクション『ノマド:漂流する高齢労働者たち』を原作とした、2021年のアメリカ合衆国のドラマ映画である。クロエ・ジャオが監督、脚本、製作、編集を担い、フランシス・マクドーマンドが主演を務めた。2020年9月のヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞したほか、トロント国際映画祭でもピープルズ・チョイス・アワードを受賞するなど高い評価を受けた。さらに、第93回アカデミー賞では作品賞、監督賞、主演女優賞を受賞し、ジャオは有色人種の女性として初めて監督賞を受賞した。また、マクドーマンドは同一作品で製作者と出演者の両方としてアカデミー賞を受賞した史上初の人物となった。ゴールデングローブ賞、英国アカデミー賞、インディペンデント・スピリット賞などでも主要賞を多数獲得している。
物語の背景には、2008年の世界的経済危機がある。その影響でリタイア世代も容赦なく家を手放すことになり、自家用車で寝泊まりしながら安い時給の過酷な肉体労働を求めて全米を動き回る人々が現れた。不安定な状況下でも自尊心と互助の精神を持ち続ける彼らは「現代のノマド」と呼ばれる存在である。主人公のファーンもその一人であり、ネバダ州エンパイアで臨時教員をしていたが、工場の閉鎖に伴う街の経済破綻により家を失った。最低限の家財道具を車に積み込み、日雇いの職を求めて流浪の旅に出たファーンは、その過程で同じ境遇の人々と交流を深めながら、「現代のノマド」の実像を描き出していく。

sumisumi_04153のレビュー・評価・感想

ノマドランド
9

「人生の"喪失感"と向き合うこと」

リーマンショックによる企業の倒産、夫との離別により居場所を失った女性が、キャンピングカーで生活する「遊牧民」となる様子を描いたストーリーである。
物語に出てくる遊牧民は、実際に遊牧民として生きている方々が登場されているため、ノマド生活の偽りのないリアリティさが伝わってくる。
日本とは違う経済弱者達、彼らは人生で何かを喪失した経験をもっており心が強い。
さらに巡る土地の風景や人々は素晴らしく、社会の秩序や規律から遠く離れた、自然と共に生きる生き物らしさを感じさせる。
「ホームレスではなく、ハウスレス」本物のノマド民が口にしたセリフには強い説得力があった。
行き着く先で出会っては別れを繰り返し、仲間が亡くなれば自然の中で弔うノマドたち。
彼らは、それぞれが"喪失"を経験したからこそ強く、ノマドとしての生き方は決してロマンや逃避ではないようだ。
一緒にいたいと思ってもない人と一緒にいて、利便性ばっかりに頼り、物資的なものに執着しがちな日常生活から一旦身を引いてみたいと思わせる。
本物の土地や自然光を利用した迫力のある映像や音響と共に、バッドエンドでもなくハッピーエンドでもない、人間の静かな生き方に迫る作品である。