「22年目の告白ー私が殺人犯ですー」(2017)主演二人の圧巻の演技に引き込まれ、邦画サスペンスに目覚める
<作品概要・あらすじ>
22年前、残忍な手口で5人の命が奪われる連続殺人事件が発生した。
当時の担当刑事の牧村(伊藤英明)は、あと一歩のところまで犯人を追いつめるが、上司を手にかけられた上に犯人を取り逃がしてしまう。
事件は時効を迎えたが、曾根崎(藤原竜也)という男が突如その殺人事件の犯人であると告白。
殺人手記を発表し、派手なパフォーマンスと容姿から、日本中がその男に引きつけられ、日々メディアやSNSで拡散されていく。
曾根崎に熱狂する日本国民だったが、それは新たな事件のはじまりで…
公開:2017年6月10日
監督:入江悠
原作:韓国映画「殺人の告白」(2012)
出演:藤原竜也、伊藤英明、夏帆、野村周平
<レビュー>
藤原竜也といえば日本を代表する演技派俳優だが、「カイジ」などの作品の影響もあってか、演じる役どころは「クズ」「ゲス」なものが多いイメージだ。
この作品も、いきなり過去の殺人を手記にして発表しだすような男の役どころということで、どんな「クズさ」をみせてくれるかと期待した方も多いだろう。
たしかに物語前半の藤原竜也演じる「曾根崎」は、マスコミを引き連れて被害者遺族のもとへ謝罪に訪れたり、手記のサイン会をしたりと、なかなかトリッキーである。
しかし物語後半、その印象はガラッと変わる。
ここで重要なのが、伊藤英明演じる「牧村」とのからみだ。
牧村は22年前の事件から犯人を追い続けている刑事なのだが、実はこの曾根崎と牧村、真犯人をあぶりだすために手を組んでいたのだ。
この事実がわかる物語後半からは、藤原竜也の激情を抑えた演技が素晴らしく引き込まれ、感情移入させられる。
さらに物語前半の伊藤英明の周囲をだます演技力と、藤原竜也と同様、真犯人を追いつめるという執念と悲しみの演技が圧巻である。
最終的に2人の執念で真犯人はあぶりだされるのだが、この真犯人の動機が、犯罪だからこそ手放しで肯定できないものの観る人を考えさせるものだった。
この作品は、出演者の演技に引き込まれ、登場人物の感情にも感情移入することができる。
今まで邦画サスペンスに魅力を感じなかった人も、きっとその魅力に目覚める作品だろう。