等身大のスポーツ漫画
熱心に部活動を行った経験のある人には特に刺さるリアリティのあるスポーツ漫画。
弱小のバスケットボール部が大きな目標に向かって成長していく過程が描かれていくが、その中で高校生ならではの苦悩(学問、恋愛、進路)にぶつかる様子も描かれている。
部活動の周りにある人間関係や怪我や伸び悩みによる挫折、保護者の支えや並行して営まれる高校生活の様子、そういったものがしっかりと描かれているので、身に覚えのあるような場面に触れることもあり物語が身近に感じられる。
目標に向かって努力し、一つ成長した時の喜び、手が届かなかった時の虚しさ。一生懸命だからこそ得られる特別な経験がこの物語の中には詰まっていて、それは高校生という年代にしか出来ないこと、その時だから出来ることを同時に描き出している。
また、それぞれの登場人物の背景も丁寧に描かれていて、それぞれがドラマを抱えながら日々の生活が送られているというリアリティのある場面も描かれる。そういった側面を切り取りながら一つの目標にチームとして臨んでいくという様子を描いている。
それは正にどこかにあるかもしれないような、そんな劇的ではない等身大の物語。それがより新鮮なスポーツの感動と熱気というものを体感させる要素となって働き、劇的な展開のあるバスケットボールの魅力を同時に引き立てている。
そんな魅力の詰まった『あひるの空』は高校生活の部活動・バスケットボールというものを中心に置きながら、登場人物の一人一人が送る人生をもってそれを多角的に捉えた酸いも甘いもある夢見がちには進まない等身大のスポーツ漫画となっている。