ゴールデンカムイ / Golden Kamuy / 金カム

『ゴールデンカムイ』とは、週刊ヤングジャンプにて2014年8月~2022年4月まで連載された野田サトルによる日本の漫画である。
明治末期、北海道のどこかに隠されている大量の金塊をめぐって繰り広げられる命懸けのサバイバルに挑む人々の群像劇である。
日露戦争で鬼神のごとく活躍した「不死身の杉元」とアイヌの少女「アシリパ」を中心に、アクの強い登場人物たちがそれぞれの行動原理に従い、時に戦い、時に手を組み、敵味方が入れ替わりながら物語は進む。作中にはアイヌや北方少数民族の伝統的な食や生活の描写が多く含まれており、その精神性や歴史を分かりやすく伝えている。
本作品は、「マンガ大賞2016」「手塚治虫賞マンガ大賞(2018年)」など数々の受賞歴があり、アニメ化もされた。
連載最終回の公開を3週間後に控えたタイミングで、公式マンガアプリ『ヤンジャン!』にて最終話を含む全話を無料公開するという、斬新なマーケティングも大きな話題となった。

roki_rokiko8のレビュー・評価・感想

ゴールデンカムイ / Golden Kamuy / 金カム
10

新感覚バディ冒険譚

この漫画の舞台は明治20年代。日露戦争の帰還兵・杉元佐一とアイヌ民族の少女・アシリパがひょんなことから出会い、アイヌの男たちがどこかに隠したと言われる金塊をめぐる事件に関わっていく、北海道冒険譚です。
この作品の見どころは「隅々まで濃いキャラで満たされた世界で起こる、ギャグとシリアスのジェットコースター」にあります。
主人公の杉元は「不死身の杉元」の異名を持つほど戦闘能力に優れ、相手を敵と認めれば容赦なく殺しにかかるような人間でありながら、虫が苦手で少女雑誌を愛読している。その相方のアイヌの少女アシリパは凛とした顔立ちでさまざまな変顔をこなし、杉元が携帯している味噌を「オソマ(うんこ)」と言って譲らない。
彼らの敵対勢力として描かれる陸軍第七師団の構成員は「戦争で前頭葉の一部が吹っ飛んでいて興奮すると変な汁が出る中尉」を筆頭に、「サーカスの少女団に少女の衣装を着て真顔で混ざる屈強な軍曹」「興奮すると早口の薩摩弁になってしまって何を言っているのかわからない少尉」「精子をものすごく飛ばせる上等兵」と濃いキャラが乱立。
一見するとぶつかり合って調和しないような濃いキャラたちが、しかしきちんと関係を成立させている。そこを上手く調和させているのが、激しい緩急で巻き起こるギャグとシリアスの相転移です。
味噌をうんこだと思っていたヒロイン・アシリパは勇気を出して口にしてから味噌を好むようになったものの、呼び方は「オソマ(うんこ)」のまま。どう見てもギャグのための設定かと思いきや、ある事件をきっかけに相棒の杉元と別れて行動する中で、「杉元のオソマがなくなってしまった」と呟く彼女のセリフには寂しさが滲み出る。
登場人物一人一人が持つ濃いキャラクター性がギャグにもシリアスにも転ぶことで、うまく調和を保っている。その転換のスピードに読む人は巻き込まれ、逃れることはできないでしょう。