DUNE/デューン 砂の惑星

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DUNE/デューン 砂の惑星
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デューンに観る映像と音響の極地

ずっしりと重厚感のある映画だ。デューンの原作は60年代に発表され、古典SFの代表だ。ファンの間ではすっかり知られた物語でビルヌーブ監督も10代で読んだという。となれば興味はストーリー展開よりどう映像化されているかに移る。ビルヌーブはこの興味に現代の技術で可能な最高の映像美と音響で答えた。

映像は素晴らしい。デカくて重いIMAXカメラを贅沢に使い、重厚な画面を作り出した。カメラはほとんど動くことがない。
多くの絵がFIXショットで作られている。それはこだわりの画家が描き込んだ絵だ。カットの一枚一枚が描き込んだ絵で構成されている。美術館で鑑賞しているような感覚に囚われる。次にはどんな絵が現れるのだろう。そんな興味で映画の時間が流れていく。

もう一つ特筆すべきが音響。音楽担当者は誰なのかとクレジットを見るとハンス・ジマーとある。なるほど、言わずと知れた現代映画音楽の巨匠にしてアイコンだ。映画を観ているとその世界観に没入してしまうが、ふと気がつくと音楽が鳴っている。音楽なのか現場音なのか判別がつかない音響。没入してしまう理由の一つがこれかと思うのだが後で作って貼り付けたと言う感じがまるでない。まるで最初からそこにあったと思わせるほど自然なのだ。音響のおかげであらゆるカットが冴え渡る。長尺の映画であることもあり、鑑賞が辛い時間帯も確かにある。そんな時でさえ音響効果に神経を集中させると
その緻密さに心を奪われ、長さを感じることもない。むしろ観ている今の時間がとても貴重なものに感じられ、いつまでもこれが続いて欲しいと願ってしまうのだ。

映画好きを唸らせる映画であることは間違いないが、エンタテイメント性はあまりないのも事実。観客を選ぶタイプの映画だが、映画を観ると言うより何か別の体験をしたいと思った時にお勧めできる映画だろう。没入するほど楽しめる映画だし、没入を邪魔するストーリーの破綻やセットの嘘臭さを徹底してなくしている。一級の映画人が作った一級の映画と言えるだろう。