芸術性の高い漫画作品
ジョジョの奇妙な冒険は1986年から2022年現在まで連載している荒木飛呂彦作の漫画です。
第1部から第6部までのストーリーは「ジョースター家の血族」と敵対する「ディオ」との因縁の対決を描き、続く7部8部はそのパラレルストーリーが描かれています。
シリーズ作品数は100巻を越え、岸部露伴シリーズ等スピンオフ作品も多数。
作品全体のテーマは「人間賛歌」であり、やや大人向けの作風でミステリ要素を含むバトルが読者を楽しませています。
私がこの作品を愛しているのは、バトルやストーリー、セリフ回しやミステリの面白さだけではなく、芸術について知れば知るほど、作品のオマージュがちりばめられていることに気づいてうれしくなる、ちょっとした楽しみがあるからです。
それらは本連載が始まった当初から存在します。
たとえば、第1部の主人公ジョナサン(5巻140ページ扉絵)の描かれ方は国立西洋美術館松方コレクション所蔵作品「オーギュスト・ロダン」彫像作品を反転させたポージングになっています。(美術手帳「西洋美術から見る「ジョジョの奇妙な冒険」でも明記されている)
他にも、「エゴンシーレ」「ヘンドリク・ホルツィウス」「クリムト」の他、「ゴッホ」「ゴーギャン」「ダリ」などは作中でもそのまま描かれているほどで、誰が見ても「これは●●だ」と理解できる面白さがあります。
また、ジョジョ立ちとされる身体的表現も、絵画的な要素とファッション誌のポージングが参考になされ、その元ネタを探すのは私を含む絵描きの間では楽しみの一つとなっていました。
2009年にはルーブル美術館にて「小さなデッサン展」にて作品が展示され、ルーブル美術館を題材としたオリジナルのストーリーを描いた漫画が描かれ、2012年に「荒木飛呂彦原画展 ジョジョ展」の開催が発表され、「荒木飛呂彦原画展 ジョジョ展 in S市杜王町」を仙台・東京で開催、2018年には東京・新国立美術館にて「JOJO展」が開催。
新国立美術館での漫画家の原画展は手塚治虫に次ぎ2人目であることから、芸術性の高い作品であると世界的にも認められている作家のひとりです。
荒木飛呂彦の作品は年々アメリカンコミックの絵柄に近いものと分類され、その絵柄の癖の強さでえり好みが非常に分かれる作品でもあり、巻数が多く、物語も癖があるためなかなか「見てほしい」と言いにくい点もあるかと思います。
そんな方には、2020年にはNHKで第四部に出てくる「岸部露伴」という漫画家のキャラクターを主人公に据えたスピンオフ作品を高橋一生演じているので、少しでも興味があり、けれども絵柄が…という方はぜひここから入っていただけたら嬉しいです。