ジャズがわからなくても読める、ジャズが聞きたくなる漫画
「ジャズの漫画」と聞いて、あなたはどんなイメージをするだろうか。
おしゃれ?かっこいい?よくわからない?
そういう少し斜に構えたようなイメージを文字通り「吹き飛ばしてくれる」のがこの「BLUE GIANT」という漫画。
もちろん音は出ないのだが、主人公やその他の登場人物から熱や圧が感じられる。
気迫と情熱が高濃度で描かれている。
音は出ていないのに音を感じ取れるような錯覚に陥る。
専門用語なども少なく、ジャズのことを知らなくても熱中できる漫画だ。
主人公の「宮本大」は高校からサックスを吹き始める。
そこで大には特別な才能が…という「いつもの漫画パターン」ではない。
もちろん師匠が付いてくれたり、幸運に恵まれているのだが、彼はずっと吹き続ける。本当にずっと吹き続ける。
漫画だからいつまでも吹いていられるのだが、苦しいときも悩んでいるときも、本当に毎日吹き続ける。
ありえないほどのストイック。圧倒的練習量。いきすぎて逆にリアルに感じられるほどだ。
もちろん失敗もたくさんしているし、窮地には何度も立たされている。
その中でも彼の頭の中は常にジャズの事しかない。
プロフェッショナルとはこういうものなのかとも思える。
悪路を4WDのような車で走破するような、困難に打ち勝っていく様子が清々しい。
それでいて、いわゆるスポ根とは違う。
「真摯に向き合っている」、「好きで仕方がない」という表現が近い。
暑苦しいと呼ぶにはあまりに純粋で、根性と呼ぶには狂気じみている。
ただ、この漫画は吹き続けている漫画で、息継ぎの日常パートのようなものは少ない。
それが辛く感じる人はいるかもしれない。
幾度となく打ちひしがれても何度でも立ち上がる主人公の姿は、こちらに勇気と興奮、ジャズへの興味をくれる。
オススメの漫画だ。