ミッドナイトスワン

ezohuri35のレビュー・評価・感想

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ミッドナイトスワン
9

マイノリティやあらゆる世界を深く考えさせられました

予告を拝見し、決して明るくコミカルな作品ではないけれど、なぜか心ひきつけるものがあり、その正体は何なのか確かめたくて鑑賞しました。もともとバレエを習っていたこともあり、バレエに関連している映画は好きでよく見ています。一果役の服部さんがもともとバレリーナであるため、踊りのシーンは期待して観ました。草彅剛が演じるトランスジェンダーで社会や家族、すべての孤独と生きる凪沙と母親から育児放棄をされ、親戚の凪沙のもとに来る服部樹咲演じる一果。最初はお互いが疎ましく、心を閉ざしている二人ですが、一果が学校帰り、小さなバレエ教室を見つけ、少女としても一人の人間としても成長し才能を開花させていく。そんな一果を見てお互いの孤独を共有しつつも母親としての愛情が目覚めていく凪沙の物語。二人がかわす言葉は少ないけれど、少しづつ信頼を深めていく様はなぜか切なく清らかで胸が熱くなりました。随所で見られる一果の踊りのシーンは繊細で美しく期待していた通り素晴らしかったです。最後の結末は優しさの中に寂しさが温かさがありいろんな気持ちが乱れあう不思議な感覚になりました。たくさんのシーンとともに音楽がずっと頭から離れない余韻が悲しく残る映画だなと思いました。劇中の音楽も映画の内容を邪魔せず、ノスタルジックな雰囲気を作り出していてとても印象深かったです。どちらに感情移入するかで映画の中の二人の心の変化に考えさせられたり、あの時こうだったら最後は変わったんじゃないかと思い巡らせたり、何度も見たくなるそんな映画でした。