絶望を通して希望を教えてくれる
純粋な小学生だった主人公が、年を経るにつれてだんだんと堕ちていく様を描いた作品。
最初はひよこ?のようにデフォルメされたキャラクターが、時には三角形に、時には生々しい顔のない男性に描かれたりして大変芸術的。不思議な世界に連れていってくれます。
主人公が緩やかな辛い体験を重ねて死にたくなっていく様は非常にリアルで、これを読んでいる人とは本質的に仲良くなれる、そう感じさせてくれるほど、リアルに描かれています。
また、おそらく作者自身が感じていたであろう、学生時代のスクールカースト上位者、つまり「陽キャラ」への皮肉が随所に描かれていて痛快です。これが卑屈な描かれ方をしていたら笑えないところなんですが、極端にデフォルメされたキャラクターがピエロ的に振る舞うから面白い。
後半に進むにつれて若干グロテスクだったり極端に暗い描写が増えてくるので、苦手な方は注意。私は比較的苦手な方で、我慢しながら読むことにはなりました。
ただ最後まで読めば生きる希望をもらえることは約束できます。
浅野いにお作品に通奏低音のように流れる「今を生きる大切さ」を教えてくれる作品。
身近にいる人を、もっと大切にしたくなる。そんな作品に感じました。