ビューティフル・マインド / A Beautiful Mind

ビューティフル・マインド / A Beautiful Mind

『ビューティフル・マインド』とは、ノーベル経済学賞受賞の数学者ジョン・ナッシュの半生を描いたアメリカの映画。
数学界、経済界にとって画期的な理論「ナッシュ均衡」を発見、発表する天才数学者のジョンだが、人付き合いが苦手な中で仲の良い友人が出来たり秘密部隊から極秘任務を任されるという幻覚を見る統合失調症に苦心した。本作では統合失調症の世界観の例を示すとともに、最初は自身の幻覚を現実と思い込んでいたジョンが事実を受け止め、周囲の人たちと共にその事実と向き合っていく様が描かれている。2001年公開。

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ビューティフル・マインド / A Beautiful Mind
6

ラッセルクロウが数学者に?映画ビューティフル・マインドをネタバレレビュー

映画「ビューティフル・マインド」は、アカデミー賞を受賞するなど、ハリウッドで成功している俳優であるラッセル・クロウが主演の作品です。
ラッセル・クロウが演じたのは、実在の天才数学者であるジョン・ナッシュで、1994年にノーベル経済学賞を受賞した人物です。シルヴィア・ナサーという作家による同名のドキュメンタリを元にしています。
この原作本の大きな特徴は、若く才能溢れる数学者だったナッシュが、やがて統合失調症によって苦しむようになって闘病生活を強いられる中での、周囲の人たちの苦悩、そして奇跡的な回復と若き日の業績が認められたことによるノーベル賞受賞までが描かれているというところにあります。
原作との違いとして特筆すべきなのは、ナッシュの才能についての描かれ方です。原作の(つまり実際の)ナッシュは、本当に天才で、発病前の若い頃の時点で、その数学の業績は周囲も認めざるを得ないほどでした。また、その才能への自負のあまり、他人を見下しているようなところもありました。
一方、映画のナッシュは、「天才」とされてはいるのですが、革新的な業績を挙げたいと願うあまり、平凡な成果でもいいから論文を出そうとしたりはしません。学生時代には、同世代の他の若者たちが成果を出していく中で、論文の一つも出ていなくて、大学の教授からもあまり認められてないようにも見えます。
こうした苦悩が描かれているからこそ、ある時、急に閃いて、後にノーベル賞に値することになる経済学の数学的原理にたどり着くシーンには、心踊らされるものがありました。
また、映画の大きな特徴として、統合失調症の症状としての「幻覚」を、ストーリーに組み込んでいる点があります。
大学を出て若い研究者となったナッシュは、敵国の暗号解読のための極秘の任務に関わるようになります。この「仕事」のことは誰にも話してはいけないもので、やがて結婚してからも、奥さんのアリシアにも内緒にしていました。しかし、ナッシュの存在を知った敵国に、やがて命を狙われるようになり、突然、カーチェイスのようなシーンが始まり、まるで別ジャンルの映画のようなスリリングな展開に。何の説明もなしに、何かに怯えるようにして部屋にこもってしまったので、アリシアはとても心配します。
これら「任務」に関するシーンはとても圧巻なのですが、実はナッシュの幻覚で、このあたりを境に、精神病院や自宅での闘病生活が始まります。実は、命を狙う敵や、ナッシュをこの任務に誘いにきて以来、ともに行動していた人物さえも、幻覚がつくりだしたイメージに過ぎなかったのでした。
こうして、映画の内容はここから、ナッシュの闘病生活へとシフトしていきます。
命を狙われる幻覚を見てナッシュが引きこもった場面から、統合失調症の診断を受けてからの闘病生活まで、アリシアを演じるジェニファー・コネリーの演技により、闘病を支える周囲の苦しさがよく描写されていました。
映画の終盤で、老人になったナッシュはノーベル賞の受賞を告げられ、大学の教授たちから賞賛されます。受賞のスピーチでは、今も続く長い闘病生活の中で、自分を支えてくれた妻に感謝を述べます。これこそが孤独で研究に打ち込むしかなかった天才が、長い時間をかけてたどり着いた答えだったのでしょう。
ナッシュにだけ見える幻覚の「友人」たちさえも、優しく微笑みかけているようでした。
全体として、テーマの重さや「幻覚」を表現の軸にしていることなどもあり、最後まで観終わってからも今ひとつすっきりとしない人もいるかもしれません。それでも、若き日のナッシュの孤独や努力がやがて報われ、それ以上に大切なことに気づけたラストシーンは、とても感動的であり、勇気づけられるものであることは間違い無いので、とてもおすすめの映画作品です。