本編との違いや魅力は?
河本ほむら原作、尚村透作画の漫画「賭ケグルイ」は、お金持ちの家の生徒たちが通う私立百花王学園を舞台にしたギャンブルものです。アニメ化もされている作品ですが、実写版もあり、テレビドラマと映画があります。
実写の賭ケグルイは、一見、可憐な見た目ながら、ギャンブルのスリルに狂う少女・蛇喰夢子(じゃばみゆめこ)を浜辺美波が演じたことでも注目される作品です。ここでは、実写映画の第一作目である、「映画 賭ケグルイ」について解説・レビューします。
その前に、「賭ケグルイ」の基本的な世界観について説明しましょう。
百花王学園がお金持ち学校なだけに、ギャンブルで賭けられる金額は圧倒的な多額で、敗北した生徒は多額の借金を背負うこともあり、一歩間違えれば破滅です。また、ギャンブルの強さによって生徒の価値が評価され、生徒会への「上納金」によってランクづけされるのですが、そのランクが低いものたちは、通称「家畜」という、他の生徒たちから馬鹿にされ人間扱いされないポジションに落ちてしまいます。
家畜は、男子生徒か女子生徒かに応じて、「ポチ」「ミケ」と呼ばれますが、このポチやミケになってしまうと、日常的にひどいいじめを受けることになるのです。百花王学園では元々、伝統的にギャンブルが重視されてきたのですが、現在のような理不尽な状況は、生徒会長の桃喰綺羅莉(ももばみきらり)が圧政を行ってきたことによります。
原作やアニメ、テレビドラマで描かれた賭ケグルイの本編は、ギャンブル好きな蛇喰夢子が、強敵である生徒会長と勝負したくて生徒会に次々に挑戦していく物語です。また、かつてポチになってしまったところを、夢子に助けられたことがある鈴井涼太が、夢子に振り回されギャンブルに巻き込まれていく物語でもあります。
それでは、「映画 賭ケグルイ」について見ていきましょう。
本編では賭ケグルイは、生徒会と蛇喰夢子がギャンブルでバトルするお話がメインとなっています。これに対して、映画第一作の大きな特徴は、「非ギャンブル」の組織が登場するという点です。この組織は「ヴィレッジ」と呼ばれています。
ヴィレッジは、ギャンブルの価値を絶対視する百花王学園において、ギャンブルをせずに、学園の一箇所に固まって、普通の学生らしい生活をしていこうとする人たちです。ポチやミケに落ちてしまった生徒たちが、たくさん参加しているようです。
物語の主軸は、生徒会がヴィレッジを排除しようとする動きに対して、どのように抗うかというところにあります。
ヴィレッジは白装束の、一見、ちょっと不気味な集団で、その幹部の歩火樹絵里(あるきび じゅえり)や、リーダーで、かつては桃喰綺羅莉ともギャンブル勝負をしたこともある村雨天音(むらさめ あまね)の存在感が印象に残ります。
ちなみに、村雨は一人だけ黒い服です。
また、ヴィレッジの他に、謎の武装集団も登場します。
このように、ギャンブルをしない集団や、武装集団が登場する中で、本編と違って、必ずしもギャンブル一色ではないところに新鮮さがあると言えそうです。
実際、映画の主要な登場人物が拉致されたり、ヴィレッジ解体を目指す生徒会が、
ヴィレッジが拠点にしている建物から強制排除をしようとしたりという場面があります。
結局、生徒会が全員強制参加のギャンブルイベントを仕掛けたことにより、ヴィレッジ側もギャンブルへの参加か退学のどちらかを選ぶことを迫られます。
果たして、「ギャンブルでは人は救えない」と考える村雨は立ち上がるのか、ヴィレッジの人たちはこの危機を乗り越えられるのか、といったハラハラさせられる展開になります。
また、それとともに注目なのが、生徒会の仕掛けたギャンブルに夢子とともに参加することになってしまった鈴井が、負ければ借金を背負わされることになるピンチを乗り切ることができるのか、といった部分です。
これらの問題が無事に解決するのか、また、ギャンブルの裏で拉致などの暗躍をしている人物とは誰なのか、終盤まで目が離せない展開が続きます。
意外な黒幕の正体も明らかになります。
こうした謎の要素もあるので、ギャンブルもの・学園ものでありながら、同時に推理もののような面白さもあり、賭ケグルイをよく知らない人にも充分におすすめできる作品です。
また、「賭ケグルイ」の特徴でもある登場人物の「顔芸」や、実写版でよくみられるコミカルな描写も健在で、映画オリジナルキャラだけでなく、早乙女芽亜里や、本編では敵として登場した木渡なども活躍していたりと、元から「賭ケグルイ」が好きだった人でまだ本作を観ていない人にもおすすめです。