様々なエンタメからの引用、読むものを置いていく展開の早さ、魅力的なキャラクター、主人公らしさを欠いた主人公。どれをとっても最高の漫画
藤本タツキ先生は、いい意味で狂っていると思います。チェンソーマンは、最高に狂った漫画です。作者の藤本タツキ先生は多くの漫画・映画から影響を受けています。
バトル時の動きや展開のスピード、コマの見せ方も映画的で、どのページでもワクワクさせてくれます。
チェンソーマンがほかの少年漫画と異なるポイントは、主人公のやる気のなさです。本来、多くの少年漫画の主人公には大きなビジョンがあります。地球で一番強いヤツ、海で一番自由なヤツ、それらを目指し、仲間と夢を追うのが大抵の少年漫画です。ですが、本作の主人公デンジにはそのような夢がありません。普通の暮らしがしたい。ただそれだけです。パンにジャムを塗って暮らせればそれでいい、彼はそう思っています。
また、大きな夢がないため、彼の行動原理は単純です。気持ちの思うまま、性欲の従うままに動く姿は読んでいて痛快です。
巻数を重ねるごとに、ジャンルが変わっていくのもこの漫画の見どころです。ラブコメ的な空気になったかと思いきや、ガラッとシリアスになったりするのは、どちらにも対応できる絵柄があってだと思います。
悪魔と戦い、共存する世界で、チェンソーの悪魔とはどんな意味を持つのか、デンジはチェンソーとどう向き合っていくのか、2020年代を代表する名作チェンソーマン、ぜひ読んでもらいたいです。