「グレイテスト・ショーマン」をみると、背中を押されるどころか、叩かれる。
みると前向きな気持ちになるどころか、「自分にも何かできるはず、やらなければならない」といっそ脅迫感すら覚える映画。それが「グレイテスト・ショーマン」だ。2017年にアメリカで制作され、日本での興行収入は52億円をこえるヒット作となった。物語の舞台は19世紀。実在したショーマン、P・T・バーナムの成功を描いたもので、ヒュー・ジャックマンが主演を務める。貧しい身分出身のバーナムは、勤めていた会社の倒産を機にショービジネスの世界に足を踏み入れる。はじめは動物の剥製などを展示していたが、全くといっていいほど客は入らなかった。その様子を見ていた愛娘の「本物を見せなくちゃ」「なにかユニークなものを」という言葉から、ユニークな人たちを集めてショーをすることを思いつく。バーナムが集めたのは、自身の身体的特徴をコンプレックスとし、世間から隠れるようにして生きていた人たちだった。彼らのショーは観客に受け入れられて、大ヒットする。ところがバーナムは、貧しい身分の出身というコンプレックスから、徐々に成功を追い求め過ぎていく。その結果、仕事で生じたスキャンダルから妻に出ていかれ、さらにサーカス小屋も火事で失ってしまう。落ち込む彼は、サーカス仲間の言葉で本当に大切なものは何かを思い出し、家族と仲間とともにもう一度ショーを立て直していく。作中では、人と違うことにコンプレックスを抱いている人物たちが、自分の殻を破って生き生きとショーにでる姿が描かれる。また、ゴールデングローブ賞の主題歌賞を受賞した作中の楽曲「This Is Me」のタイトルにもある通り、この映画は全体を通して、ありのままでいい、自分にもできることがある、というメッセージ性が強い。背中を押されるどころか、叩きながら元気づけてくれる、そんな映画だ。