「BEASTARS」はアニマルウェルフェアを分かりやすく子どもに伝えるツールになりえる
2018年にマンガ大賞を受賞した「BEASTARS」。
本編は完結しているが、2021年からはアニメの第二期もスタートし、さらに注目を集めた。
BEASTARSの主人公はハイイロオオカミのレゴシ。
レゴシの通う全寮制の学校が舞台を中心に物語はスタートしていく。
まず抑えておきたいのは、BEASTARSの世界観だ。
BEASTARSの中には人間が登場しない。
生活しているのは全て動物達で、肉食動物と草食動物に分けられる。
肉食動物と草食動物が、みんながベジタリアンで、同じ空間で一緒に生活している。
肉食動物が草食動物を襲うことも食べることも、最も禁忌なタブーとして、法律で裁かれるのだ。
ストーリーも大変面白く、見どころがあるのだが、私はこの草食動物と肉食動物がベジタリアンとして仲良く暮らすという世界観にまず驚かされた。
それは、今世界的に注目され、日本でも見直しが進められているアニマルウェルフェアに通じるものがあったからだ。
息子にアニマルウェルフェアが何なのか聞かれたときに、自分自身がふんわりとしか理解しておらず、分かりやすく伝えられなかったのを後悔していた。
こういうことだったのだと頭を殴られた感覚だった。
話をBEASTARSに戻そう。
この世界では肉食動物の苦しみ、草食動物の怯え、両者の葛藤がリアルに描かれる。
お互いに仲良くしたいのに、ふとした時に訪れる肉食動物の本能に、両者は歩み寄りきれないでいる世界なのだ。
そんな時、ハイイロオオカミのレゴシが恋に落ちてしまう。恋のお相手は、ウサギのハルだった。
肉食動物と草食動物の恋愛は可能なのか。
肉食動物と草食動物の共存は可能なのか?
まずは目線を合わせること、とレゴシが言っている。
私たちもそうなのではないか。
アニマルウェルフェアとはこれだ。
まずは私たち人間が、動物達の目線になること。
されたら嫌なこと、怖いこと、悲しいこと、嬉しいことは、動物という枠にとどまらず、生き物であればみんな一緒だと気づくはず。
第1巻にしてその世界観を教えてくれたBEASTARS。
中には食殺と言う怖い描写があるものの、それもまたリアルに通じるものがある。
教材のひとつとしての価値が充分にある素晴らしいマンガだ。