読んだら絶対に『食べる』ということを考える!
通常、農業高校を舞台にした一般家庭育ちの主人公は、農業や酪農に夢を持って入学することがセオリーではないでしょうか。しかし、主人公である八軒は、進学校出身であり入学した切っ掛けは担任の勧めであり、威圧的な父親から逃れる為に寮のある学校を選んだに過ぎなかったのです。
最初は、農業や酪農の家出身であるクラスメイトやルームメイトに引け目を感じたり、常識の差に驚いたりします。また、皆一様に『夢』があることにも驚愕し劣等感を持ちます。
物語が進むにつれ、一般家庭出身だからこそ気が付く点にクラスメイト達も感化され意見を出し合える環境になっていきます。特に印象的な物語が、『豚を育てて出荷する』というものです。
八軒はあえて、豚に名前をつけ向き合うことを選択します。実家が酪農の人には、理解しがたく改めて考える切っ掛けを与えます。生き物を食べるということは、どういうことなのか一人ひとりが考えさせられます。
食べるということ、育てるということという問題提起は勿論。学生ならではの勉強、恋愛、部活、進路、それぞれの家の事情などの悩みなども一つ一つ丁寧に向き合い答えを出そうと奮闘する姿に胸があつくなります。そして『逃げる』という選択は、必ずしも間違いや、いけないことでなのだろうかという校長の問題提起。いくつもの訴えや問題点に心を動かされる作品です。