10年に一人の逸材。
ニコニコ動画投稿者の時代から見守っていました。
このミュージシャンはその頃から、あらゆる点で、同時代の才能の中でも頭一つ以上抜けていたと思います。
このレビューでは「歌詞」「音」「世界観」の3点に分けて説明したいと思います。
歌詞
ニコニコ時代最初期の「結ンデ開イテ羅刹ト骸」でもいきなり「片足無くした猫が笑う」から始まっているように、全体的に乾いていて、触れられたくないところを撫でてくるような、ゾワっとする言葉選びをしています。文語的な熟語から、乱暴な言葉遣いになったりと、非常に幅広い語彙が特徴です。
音
素人目線ですが「耳に引っかかる音」が多いです。黒鍵や、不協和音、意外性のあるSEなどを突如織り交ぜるのが特徴的です。
また、他の歌手の曲ではまず聞かないような言葉が突然流れてきたりします。
「しとど晴天大迷惑」ではサビの最後で「ぱっぱらぱ!」(歌詞の表記)という特殊なメロディが挿入されますが、これが大変不可思議でありながら実に耳に心地が良く、一度聴いたら忘れられないフレーズとなっています。
また、逆に「聖なるもの」の表現も巧みです。「サンタマリア」のサビで、文字通り「サンタマリア」と歌われる箇所や、「Flowerwall」の「目の前に色とりどりの花でできた」の箇所などは、あえて一音ずつの間を均等に空けることで、神々しく、愛おしい気持ちが湧き上がってくるメロディーになっています。
世界観
独特の世界観の幅の広さが生まれています。
「聖なるもの、尊いもの」への賛美から、暗く汚い感情、悪態、後悔、懐かしさや自棄といった感情まで、様々なテーマを、それぞれ驚くほどの具体性をもって描いています。一つ一つの曲を聴くと、他のアーティストとは全く違う、「初めて出会う感情」が湧き上がってきます。
こんなアーティストは初めてです。
米津玄師は10年に一人、いや、それ以上のアーティストだと思っています。