戦場のメリークリスマス

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戦場のメリークリスマス
8

戦場のメリークリスマスー戦争に翻弄された悲しき男たちー

「戦場のメリークリスマス」は、日本統治下にあるジャワ島の日本軍俘虜収容所を舞台に兵士たちの奇妙な友情や愛を描いた1984年公開 大島渚監督の映画で、主演と音楽を務めた坂本龍一の美しいテーマソングもとても有名な作品です。
この映画は、ロック歌手のデヴィッド・ボウイやコメディアンのビートたけし、そして、前述した坂本龍一といわゆる職業俳優では無いメンバーがメインキャストを務めています。これは、職業俳優が演じてしまうとその技術で小綺麗にまとまってしまい、リアルな表現が出来ないという大島渚監督の狙いがあったそうです。その狙い通り、極限の精神状態の中にいる兵士たちの感情の揺らぎが繊細に描かれています。
陸軍少佐ジャック・セリアズを演じるデヴィッド・ボウイの美しさはロック歌手である彼しか出せないものですし、軍曹ハラを演じるビートたけしのぶっきらぼうな演技はハラの憎めない人間性を見事に表現しています。この映画は、戦争映画なのに一切戦闘シーンがありません。描かれるのは、収容所での兵士たちの悲しい過去やプライド、性別を超えた許されない恋心や国境を超えた友情だけです。
それなのに、この映画を観終わった後には戦争に対して非常に強い嫌悪が生まれてきます。反戦をかっこいいアクションシーンで描かず、精神描写だけで描いた大島渚監督の傑作です。