一緒になるだけの愛ではつまらない
15歳の脆く揺らぎ易い時期をもがいている様子が描かれている映画です。
この作品で目をつけた点は3つあります。
まず最初に主演のお二人の演技力です。
小松菜奈さん、菅田将暉さん両者とも数多くの賞を受賞されている有名な方なので
皆さんご存知だとは思うのですが、本当にお二人とも演技が上手いです。
溺れるナイフは、「思春期の何にでもなれる、自分の興味のある事だけやっていきたい。」という感情と「何者でもない自分への不安」とを兼ね備えている映画なので演技は絶妙に難しいと思うのですが、小松さんのアンニュイな印象が[ナツメ]という主役と重なり、現状には満足できていないが目の前の好きなものだけに興味を持っていると他のことがどうでも良くなり手につかなくなる、でも認められない自分では息が出来ない。という不安定な存在を上手に演じてくれています。
菅田さんは、[コウちゃん]という地主の息子の役を演じられていたのですが、輝いていて常に挑戦し考えている[ナツメ]がいうところの「私の神さん」という存在に見合った演技をされていました。「神様」と「思春期の男の子」は全く合わさるイメージが出来なかったのですが、実際映画を見てみると菅田さんが本当に神々しく見えます。それぐらい難しい演技をしっかりされていました。
次に、曲中歌です。
坂本秀一さんが手がける今回のサウンドは「水の中は苦しい」と感じさせるような
サウンドでした。タイトルが[溺れるナイフ]なのもありますが、主演の二人が
溺れないように必死でもがいている様子が曲で強調され、より映画に引き込まれてしまいます。
それとは別に挿入歌もまた変わった魅力を出してます。
堀越千史さん手がける「絶対彼女」「ハンドメイドホーム」「水星」「めぐり逢えたら」この曲は坂本秀一さんのサウンドと打って変わって、普通の思春期の子供、恋する女の子なんだなと感じさせてくれる曲です。
この二人の方が手がける曲が合わさってより映画に深みと美しさを感じます。
最後はやはり物語の内容です。
全能感を感じ「何にでもなれる、なんでもしたい、全て自分の物」と思っていた二人が、ある出来事に会い呪われたように苦しくなり離れてしまう。
そこで自分たちは全知全能ではないと知りこれからの事を悩み、お互いが一緒にいると呪いから離れられずにずっと苦しいから、二人はお互いを思いながらも溺れないように離れる。
まさに好きな人がそばに居る人生を送ることだけが愛ではないと感じさせてくれる作品でした。
自然に「私も頑張ろう」と最後には元気がもらえる作品なので是非一度皆さんもご覧になってはいかがでしょうか?