誇張なしに一番好きな漫画です
本筋としては過激な運命をめぐる主人公・デンジのダークファンタジーものですが、
「魔性の女に破滅させられる男の物語」というファムファタールものとしての側面、
さらには「母性から自立してヒーローになる少年の物語」としての側面も持ちます。
ここで言う「母性」は、デンジが憧れを抱く公安組織の上司・マキマのことです。
マキマの正体は超常存在たる「支配の悪魔」であり、ある目的のもとに行くあてを失ったデンジを保護し仕事を与えます。
デンジは初めて自分に優しく接してくれたマキマに対して好意を抱きますが、
「支配」を行動理念とするマキマのデンジに対する態度は、「保護する」「愛でる」といったものに近く、
マキマにとってのデンジはあくまで愛玩の対象であるかのように描かれています。
最終的にマキマの目的を知り仲間の死を乗り越えたデンジは、本当の意味で自分の人生をスタートすべく、
マキマの支配を打ち破ることを決意します。
こうした経緯の中でのデンジの成長が著しく、根本にあるどこか無気力な性格は変わらないままに
他人を気遣い自分も大切にするようになる、ひとりの少年の成長描写も本作品の魅力の一つです。
また、登場するキャラクターの誰もが印象に残る容姿や性格で描かれているのも特徴です。
物語の本筋に関わるキャラクターはもちろんのこと、数話しか登場しないようなキャラクターも印象的なフレーズを残します。
全体の戦闘描写についても非常に迫力のあるものとなっています。
ヒューマンドラマとしてもバトルものとしても一級品の作品です。