ふしぎ駄菓子屋 銭天堂

ふしぎ駄菓子屋 銭天堂

『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』とは、廣嶋玲子による日本の児童小説、およびそれを原作とするアニメや映画作品である。偕成社より2013年から刊行されている。
舞台は悩みを持つ者だけが辿り着くことのできる不思議な駄菓子屋「銭天堂」。店主の紅子がすすめる駄菓子は、どれも訪れる客の悩みにぴったりのものであり、食べると様々な効果が得られるが、食べ方や使い方を間違えたり、客が調子に乗り始めたりすると恐ろしい事態を招いてしまう。そんな銭天堂に訪れる客たちを主役に据え、その顛末を描いたオムニバス形式の児童小説である。
子どもだけが主人公ではなく、種類豊富な不思議な駄菓子の存在、駄菓子屋という空間など、キャラクターやアイテムの魅力が大きい他、様々な悩みが登場し、ハッピーエンドばかりではない作品が多くの子ども達の心を掴んだ。2022年第3回「小学生がえらぶ!こどもの本総選挙」で第1位に輝いている。
2020年にアニメ映画化、およびテレビアニメ化し全80話が放送された。2022年8月時点でシリーズ累計発行部数は400万部を突破している。

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ふしぎ駄菓子屋 銭天堂
8

大切な気持ちを思い出せる ふしぎ駄菓子屋銭天堂

銭天堂は、幸福なお客様しかたどり着けない、ふしぎな駄菓子屋である。
店主の紅子、愛猫の墨丸、ふしぎな駄菓子を作っている金の招き猫たちが織り成す、観ていると何だかクセになってくる、文字通り不思議な魅力のある作品だ。
なんといっても、紅子のインパクトが強い。見た目は白髪を団子に結い、銭柄で紫色の着物を着たものすごく大きいおばさんだ。ガラポンでその日の「幸運のお客様」と駄菓子の売値(○○年の〇円玉というところまで細かい)を決めている。駄菓子を食べてうまくいかなかった客から逆恨みされても、『銭天堂の駄菓子は紅子さんの味方』と言いながら不敵に笑う。紅子をライバル視する「たたりめ堂」のよどみが、駄菓子作りの要である金色の招き猫たちの誘拐を企てた際には、『分身ガム』と『変化ヒゲ』を使い、見事よどみを返り討ちにしてみせた。さらに銭天堂のオモチャが入ったガチャを設置する際、人に目撃されるも、紅子の目が怪しく光り、目撃者は体が動かなくなる。この時は特にふしぎな駄菓子を口にした様子はない。一体何者なのだろうか?

そんな紅子だが、某有名なせぇるすまんのように、出会った主人公が確実にドーンと地獄に落ちるわけではない。店にたどり着けた「幸運のお客様」の悩みにぴったりの駄菓子をすすめてくれ、使い方や容量を間違わないようにと、忠告もしてくれる。それを守るか守らないかは客次第。願いが叶ったあと、さらに欲を出し、転落するものもいれば、自分を戒めて駄菓子を断つものもいたり、友達や家族に救われるものもいる。さらに道を誤ってしまっても、どうすれば助かるか聞けば教えてくれたりもする。怪しさ満載の紅子だが、大切な事に気づくきっかけをくれる。そしてそれに気づけた者には仏のように優しいのだ。

この作品を観れば、忘れがちな謙虚な心を思い出せることだろう。