大切な気持ちを思い出せる ふしぎ駄菓子屋銭天堂
銭天堂は、幸福なお客様しかたどり着けない、ふしぎな駄菓子屋である。
店主の紅子、愛猫の墨丸、ふしぎな駄菓子を作っている金の招き猫たちが織り成す、観ていると何だかクセになってくる、文字通り不思議な魅力のある作品だ。
なんといっても、紅子のインパクトが強い。見た目は白髪を団子に結い、銭柄で紫色の着物を着たものすごく大きいおばさんだ。ガラポンでその日の「幸運のお客様」と駄菓子の売値(○○年の〇円玉というところまで細かい)を決めている。駄菓子を食べてうまくいかなかった客から逆恨みされても、『銭天堂の駄菓子は紅子さんの味方』と言いながら不敵に笑う。紅子をライバル視する「たたりめ堂」のよどみが、駄菓子作りの要である金色の招き猫たちの誘拐を企てた際には、『分身ガム』と『変化ヒゲ』を使い、見事よどみを返り討ちにしてみせた。さらに銭天堂のオモチャが入ったガチャを設置する際、人に目撃されるも、紅子の目が怪しく光り、目撃者は体が動かなくなる。この時は特にふしぎな駄菓子を口にした様子はない。一体何者なのだろうか?
そんな紅子だが、某有名なせぇるすまんのように、出会った主人公が確実にドーンと地獄に落ちるわけではない。店にたどり着けた「幸運のお客様」の悩みにぴったりの駄菓子をすすめてくれ、使い方や容量を間違わないようにと、忠告もしてくれる。それを守るか守らないかは客次第。願いが叶ったあと、さらに欲を出し、転落するものもいれば、自分を戒めて駄菓子を断つものもいたり、友達や家族に救われるものもいる。さらに道を誤ってしまっても、どうすれば助かるか聞けば教えてくれたりもする。怪しさ満載の紅子だが、大切な事に気づくきっかけをくれる。そしてそれに気づけた者には仏のように優しいのだ。
この作品を観れば、忘れがちな謙虚な心を思い出せることだろう。