北イタリアの風や湿度を感じる。
北イタリアの避暑地で過ごす一夏の物語。
17歳の少年エリオと、大学教授である彼の父の元へ、研究者としてやってきた院生のオリヴァーの2人の世界を美しい北イタリアの風景の中で描く。いわゆる同性愛をテーマとして扱ってはいるものの、恋愛や愛全般にかかわる問題を非常にシビアに映している。
タイトルにもある、君の名前で僕を呼んで、というのが真となる主題であり、恋愛がそもそも相手を通して自分を見つめる、というような行為そのものであることをうまく表していると思う。なにより役者2人が美しく、どのシーンを切り取っても絵になる。
2人の肌の温度であったり、触れる空気であったり、水の冷たさであったりをまさに体験するような繊細な画面の色使いと撮り方で、今後も楽しみな監督となった。
2人を繋ぐものがネックレスであるというような非常に微弱なつながりから始まり、またピアノを弾くシーンでの垣間見える教養の高さ、ありとあらゆる所にいわゆる肉体関係だけではないエロスを感じる。挿入歌であるピアノも画面を邪魔せず心地いい。失恋映画の中でも個人的に上位にランクインする作品。映画途中での父からの言葉や、映画最後の電話口でのやりとりは思わず涙がこみ上げてしまう。