ガンニバル

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ガンニバル
9

深い山間の村で人間の恐ろしさを垣間見る

東京から〇〇県の深い山間にある供花村に、赴任してくるこことなった阿川刑事の一家。
供花村の前任の駐在員は行方不明になったとの事で、その穴を埋める為に、この小さな集落に妻とまだ幼い娘を連れて3人で引っ越してくる事から、この物語は始まる。
都会から来た阿川一家は、やや緊張しながらも村民に迎え入れられ、ほのぼのと暮らせるかもしれないと新しい生活のスタートに笑顔が隠せなかった様子だった。
都会と違い、景色は美しく空気も美味しい。娘にも良い環境かもしれないと、阿川夫婦は胸を撫で下ろした。
昨年、阿川刑事はとある事件で犯人を射殺してしまう。娘の目の前で……そんなこともあって、娘は言葉を失い、笑顔を失い、これを機に自然の中で生活しようと、心機一転供花村に引っ越してきたのだった。
そうして、大自然に、村人の暖かさに救われるように、供花村にやってきた3人は徐々に平穏な日々を取り戻していくようだった。
引っ越しも終わり村人に挨拶をし、ようやく腰を下ろして、この村の駐在員として職務についたところ、阿川の頭の端に引っ掛かる程度の気になる点が、じわじわと線で繋がっていく。
「前の駐在員は、頭がおかしくなって、いなくなった」
「この村は常に監視されている」
「村のやつらは、人を食っている」
「逃ゲロ」
程なくして、この異様さに刑事の勘が働く阿川。山の方で何かがあったようだ。駆けつけると、森の中でこの供花村の当主が熊に襲われて遺体となって発見された。
現場では村の若い衆が合掌している。阿川は現場を保全しようと前に出るが、突き返される。
村の若い衆は阿川に猟銃を向けると、
「お前に出来ることはない コイツは熊に襲われた それだけや」
呆気に取られたが、その黒ずんだ銃口からいつ鋭い弾丸が発射されてもおかしくない雰囲気だった。しかし阿川刑事は、仏さんになった老婆の腕に、人型の歯形がくっきりある事に気付いた。
この村には、何かがある。阿川は、一人胸に決心したように、家族の元へと足を進める。