難解さと作者の気まぐれが魅力?『ファイブスター物語』
『ファイブスター物語』(ファイブ・スター・ストーリーズ)は、角川書店発行のアニメ雑誌「月刊 ニュータイプ」において1986年から連載されている漫画作品。
科学文明が衰退を始めている世界で、4つの恒星からなる「ジョーカー太陽星団」を舞台に、主人公である光の神・天照(アマテラス)、巨大ロボット・モータヘッド(MH、後にゴティックメード(GTM)に改変)、騎士(ヘッドライナー)、人工生命体であるファテマたちの、数千年にも及ぶ歴史が描かれる。
作者の永野護はテレビアニメ『重戦機エルガイム』でキャラクターとメカニックのデザインを手がけており、その際に創作された膨大な設定は監督の富野由悠季に採用されなかったものも多く、それらが『ファイブスター物語』の設定に受け継がれている。
他の作品と一線を画するのが、その複雑な設定のため、設定資料や年表が連載開始時点から公開されていること。
いわば究極のネタバレだが、ストーリーは年表通りに時系列に進むわけではなく、さらに読者にとってのわかりやすさに留意しない、ある意味読者を置き去りにした作風であるため、年表や設定資料を読むことでようやくストーリーが理解できる、あるいは読んでもよく理解できないというのが作品の大きな特徴であり、魅力ともいえる。
連載は長期を含めてたびたび休載を挟んでおり、約8年ぶりの再開となった「月刊 ニュータイプ」2013年5月号から連載では、連載中の作品でありながら大幅な設定変更が行われ、さらにストーリーが複雑化してファンの度肝を抜いた。
そのような経緯を経て、作者に読者が振り回されるという作品ではあるが、それを補って余りある独自の世界観やデザイン、魅力的な登場人物、壮大なストーリー展開が熱心なファンを生み、惹きつけ続けている稀有な作品である。