巧みなストーリー構成・魅力的なキャラクター
主人公を始めとして各キャラクターの行動原理や動機が明確でわかりやすく物語に入りやすい。
史実やその土地の文化について入念に調べたうえで時折大胆なフィクションを挟んでおり世界観や物語における
説得力と外連味が程よく両立できている。
主人公たちの目的は、かつてアイヌ達が集めた金塊を見つけ出すことで、その在りかを示す手掛りとなる刺青の暗号を集め解読するため
刺青に暗号を彫られた24人の脱獄囚を捕まえるため北海道各地を渡り歩くことになる。
その道中で語られるアイヌの文化や食生活、当時の北海道の自然や暮らしは本当にリアルに描かれており歴史や文化の勉強にもなる。
また、脱獄囚たちのキャラクターも非常に魅力的で、それぞれが独自の美学や人生観などを持っておりそれぞれが凶悪な犯罪者であるにも
かかわらず読み進めているうちにいつの間にか彼らを好きになっていることも多い。
物語の主軸となっている金塊争奪戦も非常に面白い。主人公勢を含め3つの陣営が入り乱れて刺青の暗号を奪い合い、時には協力しある時は裏切る
2点3点する勢力図やその中で明らかになるキャラクターの過去や変化していく人間模様から目が離せない。
最初は敵側として描かれていたキャラクターとも一時的に共闘する場面があったり、争奪戦の中で主人公以外のキャラクターも様々なことを経験し
変わっていく。
要所要所で明かされていく新事実と合わせて各キャラクターの心情や最後がどうなるのかが気になり読んでいる間ページを捲る手が止まらなかった。
多少癖のある作風だが、画力・ストーリー・キャラクターどれも高い水準で描かれており非常に面白い。おすすめの一作。