10代の教祖の意外に長い射程
尾崎豊は、没後も高い人気を誇るロックミュージシャンです。
彼はかつて10代の教祖と呼ばれ、社会への反抗をテーマにした「15の夜」や「卒業」といった曲は少年たちに熱く支持されました。しかし、彼の残した曲は若者だけに独占させておくのが勿体ない内容です。
例えば尾崎豊には、息子が誕生した時に作った「誕生」という曲がありますが、これなどは世の父親たちに広く聞かれるべき内容の詞となっています。即ち尾崎豊が作った曲の射程距離は10代の少年たちだけに向けられていたように見えて、実はもっと先の年齢の人たちにまで届くものだったのです。そこが彼の二枚腰というべき幅の広い魅力なのです!
またあまり知られていませんが、「街路樹」という曲などはハードなロックナンバーではありません。しかしこの曲はとても切ないバラードで、名曲と言って良いと思います。
さらに、没後に出た最後のオリジナルアルバム「放熱への証」に収められた楽曲もとても詞やメロディに深みがあって、やや人生に疲れたような側面が表れていて痛々しいところはありますが、名盤と言えるでしょう。
尾崎豊ほど没後にも広く深く愛されているアーティストは、日本人の歌手としては極めて稀です。それは彼の作った歌、そしてその残した録音に普遍性があるからでしょう。
今後とも彼の曲は聴かれていくと思います。