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現場で働く兵隊とその上に立つ指揮官の警察という組織を舞台にした友情
もう語り尽くされた感があるが、仕事をしたことがある人間なら誰でも味わう思い、社会の矛盾や世の中というものがコミカルに、また鋭く描かれている作品である。とにかく現場は忙しい。これが仕事かと思うような雑用が次から次へと降ってくる。それらをこなしていくうちに仕事ができるようになっていくのだが、最初から大きな仕事などは任せてもらえない。下積みを3年、5年と続けてやっと一人前になってゆくのだ。これは刑事や警察という物語ではなく働くすべての人へのメッセージではないだろうか。警察でさえキャリア、ノンキャリアで進む進路は違ってくる。室井がこぼす「正しいことができないんだ、自分のポリシーも貫けない」というのは管理職になったものなら誰もが味わう板挟みや上司からの圧力だろう。
結局仕事で一番の功労者も兵隊であるがゆえに事件解決ですべて終わりになり、その身は誰にも心配されない。そうあってはならないという社会の希望が室井という存在なんだと思う。組織は大きくなってゆくといつの間にかその本来の存在意義や理想のあるべき姿とは別の所で物事が決められ動いてしまうようになる。その地位や権威がどう機能するかや何のためにあるかよりも、それらが存続することが目的になってしまうのだ。つくづく仕事のできる人というのは必ずしもその待遇や地位には比例しないという真理が私の中で強くなった。たかが仕事、されど仕事である。