オペラ座の怪人

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オペラ座の怪人
9

永遠の音楽を手に入れるため悪魔に魂を売った作曲家の狂気の愛と悲しみ

古典的な名作『オペラ座の怪人』を原作に忠実に、また1990年代のニューヨークと19世紀のロンドンをタイムワープでつなぎ、物語を綴った作品である。怪人ファントム役のロバート・イングラム、エルム街の悪夢のフレディとはまた一味違った怪物役を見事演じている。顔が崩れ、人間を殺してその皮膚を顔に張り付けていく不気味さは、ファントムならではのものである。自分が醜いが故に若くて美貌のクリスティーヌを愛し、彼女を成功させようとした一途な思いは狂気だが、ある面共感できるところもある。ラストでその愛するクリスティーヌに仮面を剥ぎ取られ、素顔を見られてしまうのだから残酷な天罰なのだろう。
でも醜いのはファントムだけでなく自分のプリマとしての成功を怪人ファントムに委ね、契約を結ぶクリスティーヌの心もまたファントム以上に打算的で醜い。競争の激しいオペラの世界で才能もなくまたそれを磨く努力もしない人間は、クリスティーヌのように生きるかそれを追いかける怪人ファントムのように生きるか2つに1つしかないのだろうか?奇怪なロマンだけでなく現代の演劇界や芸能界を風刺した意地の悪い皮肉の効いた作品のように思えた。ファントム亡き後、クリスティーヌは大物プロデューサー達との間で自分の地位を守りこれからの仕事を得ていけるのだろうか、そんなことを考えてしまった。