大人に読んでほしい緻密なストーリーと人物描写が光る作品
徹底的に練りこまれたストーリーと、人間ドラマから目が離せません。
舞台は明治時代の北海道で、アイヌ民族が隠したとされる金塊の山を主人公たちが探し求めるストーリーです。
金塊を探す手掛かりは金塊を隠した本人と噂されるアイヌの男性の娘アシパと、男が網走監獄に収監されていた間に囚人の体に刺青として彫った暗号の地図のみ。しかし囚人はすべて脱獄しているため、ストーリーのほとんどは地図を入手すべく囚人を探すことに重点が置かれています。
金塊は主人公たち以外にも狙っている勢力があり、大きく3つの勢力が金塊争奪戦にエントリーしているのですが、魅力的なのは状況によって勢力同士で結託したり時にはスパイを送るなど、敵味方が明確に分かれていないです。誰が見方で誰が敵なのか、各登場人物の真意は何なのかを想像しながら楽しめますし、伏線も多数張られています。話が進むと「こういうことだったのか」と思わず前の話を読み返したくなることがきっとあるはずです。
また、各登場人物の描写が丁寧に描かれているため、キャラクターの性格や、登場人物間の愛情や対立、信頼などの繊細な人間関係が伺えてストーリーがよりドラマチックに仕上がっています。
文化や歴史的な側面については他の多数の記事で絶賛されているので割愛しましたが、時代考証など学術的な描写を抜きにしても大変面白いので、お勧めです。