煙と蜜

煙と蜜

『煙と蜜』(けむりとみつ)とは、長蔵ヒロコによる日本の漫画作品である。KADOKAWA発行の漫画誌『ハルタ』にて2018年より連載されている。大正5年の名古屋を舞台に、12歳の少女・花塚 姫子(はなづか ひめこ)と、30歳の帝国陸軍少佐・土屋 文治(つちや ぶんじ)という、18歳の年齢差がある許嫁同士の純愛を描く物語である。
本作は、連載開始前に『ハルタ』の付録冊子や読み切りとして掲載され、その繊細な描き込みと情緒豊かな世界観が話題を呼んだ。作画は一貫してアナログ手法が取られており、長蔵と長年活動を共にするアシスタントの少人数体制で制作されている。作者自らが細部まで筆を入れることで、作品特有の統一された空気感が作り上げられている。その高い芸術性と物語性が評価され、「全国書店員が選んだおすすめコミック2021」では第7位にランクインした。2022年には作者のヘルニア治療による休載期間があったが、連載を再開している。
登場人物の描写も本作の大きな魅力で、姫子の成長と共に変化していく二人の関係性と、当時の風俗を丁寧に拾い上げた描写が、読者を惹きつける要因となっている。

8ckeiitixのレビュー・評価・感想

煙と蜜
9

長蔵ヒロコはいいぞ。

文治と姫子は許嫁同士で18歳の年の差がある。これだけ離れていると本命じゃないのではないか、暴力振るわれたり辛い目に会うのではないかとヒヤヒヤするが安心して欲しい。文治と姫子のやりとりは可愛さに満ち、笑顔溢れるストーリーばかりなのだ。
1巻に収められている「満月と名前」は2人の程よい距離感を表現しつつ、文治が姫子を大事に思う気持ちを表した話だと思う。2人は、姫子が15歳になった時結ばれる。どう接したらいいか、素敵な女性になるためにはと努力する姫子ちゃんの姿も可愛いらしく、「できるようになりたい事」を書き留めていたノートを文治に見られ、赤面するエピソードもおすすめだ。
軍人であり、大隊一つを率いる文治。700人の部下の命を預かる彼が眉間のシワをほぐし、一息つける場所が姫子のいる花塚邸でもあるのだ。皆で夕飯を食べたり、姫子の相談相手になったり、家主と将棋を楽しんだり生きる上で大事な場所になっているいっても過言ではないと思う。
この作品は描写、言葉のセンスも惹かれるものがある。大正時代の名古屋を舞台に四季の移ろい、花塚邸の様子、登場人物の表情、当時の街中の様子もとても綺麗に描かれている。姫子の母が倒れ、医者を呼びにいくシーン、縁側に座り食後の一服を楽しむ文治、当時は贅沢な入浴、生活を営む登場人物の生き生きとして美しい場面ばかりである。
軍人と少女、年の差が好きな方へぜひおすすめしたいのが長蔵ヒロコの「煙と蜜」である。