ブルーピリオド / Blue Period.

『ブルーピリオド』とは、2017年8月号から『月刊アフタヌーン』(講談社)に連載された、山口つばさによる青春漫画である。物語は成績優秀な矢口八虎(やぐちやとら)が東京藝術大学を目指して受験に立ち向かい、美大生となり美術を学んでいく姿を描いた青春群像劇である。
作者は編集者から「売れる漫画」を要請され、「文系のスポ根もの」として好きなものに打ち込む美術部員の姿を描いた。漫画を通して美術大学受験の厳しさや楽しさを体感できるのが本作の魅力である。
コミックスは12巻が刊行され、累計発行部数は2021年2月時点で300万部を超えた。8巻では『ミニ画集小冊子付特装版』が、11巻では『塗り絵小冊子付き特装版』が同時発売した。
2019年には「マンガ大賞」で第3位になり、2020年に「マンガ大賞」の大賞を受賞した。テレビアニメは2021年10月から12月まで放送され、矢口八虎の声を峯田大夢が担当した。舞台は2022年3月から4月まで天王洲銀河劇場において上演され、八虎役を岡宮来夢が演じた。

55makiy3のレビュー・評価・感想

レビューを書く
ブルーピリオド / Blue Period.
8

繊細系主人公による新感覚芸術青春漫画

2021年にアニメ化が決定した漫画「ブルーピリオド」。山口つばさによる作品で、講談社アフタヌーンで連載をしている。かなり評判が良いと聞いていたので期待して読んたのだが、その期待を超えてくる作品だった。
以下にあらすじを紹介する。
主人公は矢口八虎(やぐちやとら)という高校2年生の男子。成績優秀ながら、素行はお世辞にも優等生と呼べるものではなく、友人と飲み歩くこともしばしば。持ち前の器用さで何事もそつなくこなしてきたが、どこか空虚な気持ちを抱いて日々を送っていた。
そんな折、学校の美術室で偶然「森先輩」と呼ばれる女性が描いた絵を見て、心を動かされる。次第に美術に興味をもった八虎は、生まれて初めて突き動かされるような衝動を覚え、やがて芸術の道へと進んでいくために奮起していくのであった──。
数多くの物語が巷に溢れ、どこか似たような設定、見覚えのあるキャラクターたちが氾濫する中、この漫画は新たな視点と世界観を感じさせてくれた。特に主人公・八虎の心理描写には胸を打たれる場面が多い。人が良く夢に向かってまっすぐで、好感の持てる、いわゆる「王道の主人公」感の強い彼だが、感受性が強く、ともすれば女々しいと言われてしまいそうなほど繊細で柔らかな心を内側に秘めている。そんな彼の成長を描く本作だからこそ、彼の芸術が今後どのように進化していくのか、彼の行き着く先はどのような場所なのか、気になって仕方がない。そして、物語の根幹にはしっかりとした「アツい部分」があり、美術という題材とうまくマッチしていると感じた。
「ブルーピリオド」は、今一番勢いのあると言っても過言ではない、文化系熱血漫画と言えるだろう。