繊細系主人公による新感覚芸術青春漫画
2021年にアニメ化が決定した漫画「ブルーピリオド」。山口つばさによる作品で、講談社アフタヌーンで連載をしている。かなり評判が良いと聞いていたので期待して読んたのだが、その期待を超えてくる作品だった。
以下にあらすじを紹介する。
主人公は矢口八虎(やぐちやとら)という高校2年生の男子。成績優秀ながら、素行はお世辞にも優等生と呼べるものではなく、友人と飲み歩くこともしばしば。持ち前の器用さで何事もそつなくこなしてきたが、どこか空虚な気持ちを抱いて日々を送っていた。
そんな折、学校の美術室で偶然「森先輩」と呼ばれる女性が描いた絵を見て、心を動かされる。次第に美術に興味をもった八虎は、生まれて初めて突き動かされるような衝動を覚え、やがて芸術の道へと進んでいくために奮起していくのであった──。
数多くの物語が巷に溢れ、どこか似たような設定、見覚えのあるキャラクターたちが氾濫する中、この漫画は新たな視点と世界観を感じさせてくれた。特に主人公・八虎の心理描写には胸を打たれる場面が多い。人が良く夢に向かってまっすぐで、好感の持てる、いわゆる「王道の主人公」感の強い彼だが、感受性が強く、ともすれば女々しいと言われてしまいそうなほど繊細で柔らかな心を内側に秘めている。そんな彼の成長を描く本作だからこそ、彼の芸術が今後どのように進化していくのか、彼の行き着く先はどのような場所なのか、気になって仕方がない。そして、物語の根幹にはしっかりとした「アツい部分」があり、美術という題材とうまくマッチしていると感じた。
「ブルーピリオド」は、今一番勢いのあると言っても過言ではない、文化系熱血漫画と言えるだろう。