ザ・サークル

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ザ・サークル
6

やや過剰に現代のSNS監視社会を描いた微妙な作品

GAFAを連想させる世界一の会社に入社した主人公は最初は戸惑っていたものの、カヤック中に救助されたことをきっかけに積極的に私生活の公開をするようになります。プライベートにまで会社が干渉してくるところ、オープン性を押し付ける社会主義らしさがまるで一昔前の日本の会社のようでもあり、観ていて面白いところです。「お天道様が見てる」と言葉にあるように、日本人的価値観と意外と馴染みやすい設定かも知れないので日本版リメイクがあっても良いかもしれません。
設定は良いところもあるものの、やや過剰にディストピアを表現していて、作中で異論を唱える人が少な過ぎるところが不自然なところ。そして非常に残念なところはこの作品なりの答えを示していないところです。テクノロジーが一長一短なのは誰でも分かっているし、今さら問題提起されることでもない。事実、Facebookの流行による人々の繋がりが「アラブの春」を起こした一方、人々の分断を招いているのもSNS。10年前だったら問題提起だけでも価値はあったかも知れないが、2017年公開は遅すぎると言えるでしょう。
また、まとめ方も残念で、オチは経営者達にもオープン性を押し付ける仕返しで終わっていました。経営者達が自身のプライベートを公開することにすら厭わない人間だったらどうだろう。どうもこの点が作品としてまとめやすくするために逃げた印象を受けます。現代のSNS監視社会の問題提起をしているようで、厳密には向き合っていない気がします。