ある画家の数奇な運命

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ある画家の数奇な運命
8

戦前・戦中・戦後のドイツ現代史を舞台に描かれる芸術家の生涯!

この映画の主人公クルトは、少年期(ヒトラー統治下の戦前期ドイツ)に叔母の影響を受けて芸術に親しんでいました。やがて第二次世界大戦が勃発し、精神の不調をきたした叔母はナチス政府の政策(「安楽死計画」)のために強制入院させられた挙句に命を奪われます。1945年、ドイツの敗戦。クルトは東ドイツの美術学校で出会ったエリーに恋い焦がれますが、エリーの父親こそが叔母を殺害した他ならぬ医官だったのです。クルトはそのことに気づかぬままにエリーと結ばれます。東側の社会主義美術を受け入れることのできないクルトはエリーと西独に亡命します。と、ここまででヒトラーの独裁、大戦、戦後の分割という大枠のドイツ現代史を舞台に物語は進行。そこに個性の際立った登場人物たちが浮き彫りにされます。デュッセルドルフの美術アカデミーで独自の表現手法を獲得したクルトは苦悶の末に新作を描き上げます。他人に知られない過去を隠蔽してきた義父はその作品に戦慄するー、というのがストーリーの大枠ですが、ネタバレはしていません。さてさて、主人公クルトのモデルは実在の画家だというのは驚きです。現代ドイツ最大の芸術家ゲルハルト・リヒターその人が作品のモデルなのです。リヒターの生涯(実際にナチス親衛隊の軍医であった義父に叔母を殺害されたことがあります)の「詩と真実」まさにDichtung und Wahrheitを骨太に描き切った大作映画です。