統合失調症の天才数学者ナッシュの半生を描いた作品
私も統合失調症と診断されたことがあるので、興味深く見ていた。精神疾患と健常者の境目は、幻覚や幻聴と現実の境が見えなくなること。この作品はナッシュが見ている幻覚も映像化されている。それを見破るカギとなったのは、手術で腕に埋め込まれたとされているICチップが、手術跡すらないと分かった時だった。そう考えてくるとナッシュが政府機関から依頼されたとしている、新聞や雑誌の活字から暗号のようなメッセージを探し出してくるという仕事も、ナッシュの一人よがりのものだということがわかってくる。統合失調症の症状から脱却するのは、自分が見えたり感じたりしているものが、自分の妄想や幻覚、幻聴によるものなのかそれが自分で判断できるということだ。幻覚や幻聴だと認識できた時点で本人はもう精神疾患ではない。それに惑わされずしっかり現実を見て生活していけばいいだけの話である。ナッシュはその判断が自分でできずに、幻覚や幻聴妄想に流されて動いてしまったから統合失調症なのである。精神に異常をきたしているから自分の可愛い子供を危険な目に合わせるようになってしまう。奥さんがいて本当によかったと思う。仕事的にはゲーム理論を発見構築して成功したかもしれないが、社会人・夫としては失格だということ、愛情或る奥さんのおかげで救われたと思う。ナッシュも仕事で成功したい、認められたいという願望が強かったからそういう幻覚が見えたんだと思う。功名心が強かったからその裏返しで、政府から極秘任務を依頼されて、それに自分が従事しているという発想になったんだと思う。なんかアッシュの精神状態を分析する精神科医のようになってしまったが、名を成したいというコンプレックスが病状を招いたのではないか。自分が生活するうえでも非常に興味深い映画であった。